第24話

 カイヨウの船に移るまえに、シェングはフーショウの体を洗うため、かれに食べものを与えるために船倉に降りていった。

 燭台を室のすみに置き、まとわりついてくるかれの手を払いのけながら準備を整えた。

 かれは彼女への愛情の証しとして、一物を大きくそそり立たせ、彼女にまたがろうとした。

「おまえは犬じゃないんだろ!! 母親に対して、おやめ!」

 険のある声が彼女の口から飛び出した。

 シェングはハッとして口を押さえた。

 シーファは機嫌を直してフーショウを手招いた。

「体を拭ってあげるから、こっちへおいで」

 かれはおずおずと彼女のかたわらにうずくまり、股間に手をやっていじくりはじめた。

「そんなもの、いじるんじゃないよ!」

 シーファが声を荒げて鋭く云い放った。

 フーショウは驚いて、すねたように腕を組んでわきの下に入れた。

 それっきりシーファは黙り込み、かわりにシェングがかれの体を拭った。

 かれが食べ物を食い散らかしているのを待っているうちに、甲板が騒がしくなってきた。

 カイヨウが何か叫び、ついで上げ蓋を上げて、

「ついたよ、そいつも連れて上がっておいで」 

と告げた。

 彼女はフーショウの手を取り、甲板へ出た。

 かれは短く吠えながら、興奮し、船のへりをあちこち動きまわった。

 彼女はほとんど引きずられて、かれについていった。

 かれが吠え立てる言葉の意味を彼女には理解できなかった。

「おいで!」

 カイヨウが彼女に手を振った。

 むりやりフーショウを引っ張って、船の橋げたを渡り、直接カイヨウの船に移った。

 かれの船は先の船のゆうに三倍はあった。へ先からともを眺めても、その間を大きな船長室が遮り、見通すこともできない。中央にどっしりと太い帆柱が立ち、空に高く伸びていた。

 帆桁に帆は丸めてくくりつけられている。

 まだ出港はしないのだ。

 船員がせわしく動きまわるなか、彼女はフーショウの手をつかんだまま、頼りなげに突っ立っていた。

「どうだ、すごいだろう?」

 彼女は振り返った。

 カイヨウは彼女の様子に怪訝そうな顔をしたが、

「疲れたんだな? そろそろそいつを鎖につなげよう。それから軽く食事でもとろう」

 フーショウが不機嫌なうなり声を上げた。

 かれを船尾の帆柱に鎖でつなげると、カイヨウは彼女に見せたいものがあると、船長室へ連れていった。

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