第15話
体が痛い。
シェングは目覚めて、そう思った。
それはがれきの寝床のせいではない。
皮膚がジンジンとうずく。
なでさするつもりで左の前足をもちあげた。深い藍色の皮膚に白い斑紋が浮き上がり、形を変えていく。
寝ぼけ眼でじっと考えてみる。
これが原因だった。
鼻でため息をつくと、がれきの幾つかが勢いよく飛んでいく。
夢のヒトと思考がごちゃまぜになっていたらしい。目覚めの悪い夢ばかり見ているせいだろう。
針穴くらいの悲しみが夢を見ている間、自分にプツプツと無数にあいていた。ふだんならまったく意に介さないくらいの感情なのに。
彼女はゆったりと自分を取り巻く光景を見まわす。
内陸に大国を築き、数百年ものあいだ繁栄した都の荒れ果てた残骸。白いしっくいや石が乱雑に山を作っている。
整然と並んだ町並みを彼女が翼でなぎ払い、家々を押し倒し、数箇所の山とならしめた。
なんと満ち足りた思い。
夢の中でいつも感じていた自分の存在の矮小さがまるで嘘のようだった。
彼女は安心しきってあくびをする。
再び重たくなった瞼をしっかりと合わせた。
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