第11話
フーショウとシェングは犬人間のつがいとして見世物小屋に売られた。
まぐわったまま離れようとしないかれを見て、盗掘者の頭領が思いついたのだ。
色狂いのけだものが女を犯す様は見世物にちょうどいい。
金になった。
汚物にまみれた二束三文の埋葬品しかなかった皇墓にしては奇跡的な上前だった。
二人に対する扱いはまさに犬並だった。
素っ裸で放り出され、与えられる食べ物はは残飯。体もめったに洗ってもらえず、とくにフーショウは臭いままだった。
ムチでひっぱたかれ、足でどやしつけられる。夕方近くなると、片側に鉄格子をはめた檻に入れられ、人目にさらされる。そして、興奮したフーショウが連れて来られるのだ。
シェングが少しでもいやがろうものならムチが空を切った。それを見て、かれは彼女を守るようにムチを振るう男に向かって威嚇するのだ。
かれが彼女の擦りむけた傷を丹念に舌でなめるのを見て、観衆にドッと笑いが沸き起こるのだ。
観衆はあつぼったい布を張り巡らせた天幕のなかで、この一部始終を見物していた。
野卑なやじが飛び交う。
フーショウには意味などわからない。目の前の快楽に躍らされているのだ。
しかし、シェングにはわかる。コクケンと呼ばれ、知能まで犬扱いだが、しゃべられないというだけで、すべて理解していた。
彼女にできることと云えば、このまま長い夜が更けていき、客がすべて帰ってしまうのを待つだけだった。
自分のうえでフーショウがあえぎ声を漏らして腰を動かしている。観衆の顔を眺めていながら、彼女の目はそれらを見てはいなかった。
心のなかで坊やがはしゃぎ、夫が畑から帰ってきてどっかりと炉端に座り込む。年老いた父が土間でワラを打ち、母は奥で糸を紡いでいる。
自分はどこで何をしているのだろう。
好奇と淫猥な興味に満ちた幾多の目。
すえた異臭を撒き散らす動物じみた男。
それとまぐわっているのは自分。
絶望だけが深すぎて、いまさら吐き気も起こらなかった。
ふいにムチが打たれる。声を出せと、命令が下された。
フーショウが怒りの声を上げる。
かれがうなると男はたじろいで後ずさる。見世物小屋のだれもがフーショウを恐れていた。
しかし、客は女のいやがる声を聞いて喜ぶものだ。
策に困じた見世物小屋の親方は奴隷女を買ってきて、シェングのかわりに檻のなかへ放り込んだ。
女は素っ裸で檻のなかに座り込み、わけもわからずにじっとしていた。
片側の戸が開けられ、興奮したフーショウが入ってきた。
女はかれを見て悲鳴を上げる。
見る間に客の顔が血しぶきに染まり、天幕はシンと静まりかえった。
この試みは失敗に終わった。
翌日からまたシェングが檻に放り込まれるようになった。
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