第2話 朝の入学式前

朝から聞こえてきたものは、予め設定しておいたケータイのアラーム音じゃなくて、下の階から聞こえる母の声だった。


「りぃ?あんた、こんな時間だけどまだ寝てていいの?」

「うぅん?こんな時間って…まってぇ今何時ぃ?」

寝ぼけながらケータイの電源を入れてみた。表示されている時刻は【7:25】


「ままぁ?家から駅まで何分かかるっけ」

「んー、大体10分弱じゃない?」

「私が乗る予定の電車の時刻って何時だっけ?」

「【7:43】ね。それくらい自分で把握しておきなさい!」

「ごめんねって。最後に一つ、最寄りの駅って結構大きかったよね」

「しかもあんたが乗るホームは駅の一番奥だもんね。大丈夫なの?」

さっきまでの夢心地なふわふわした気分はどこへやら、一気に体の血の気が冷めた。


「やばい!寝坊した!!」

母から「ばかっ」とツッコミを入れられ、飛び起きた。着慣れていない制服に手間をとり、大切な書類を詰め込んだバックを乱暴に持ち上げて、朝食も食べないで急いで家から駆け出した。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る