#88 しどう
「通信チュウ…通信チュウ…」
一体のボスが、目を緑色に光らせた。
「明ラカニ通信ガ来ナイ。ヤッパリ、25号機ニトラブルガアッタミタイダネ」
「コッチモ通信ガ入ラナイヨ」
「コッチモ」
「コッチモ」
4体のボスが輪になって、何やら会話をしている。
「25号機ニ何ガアッタンダロウ?」
「自然災害ニ巻キ込マレタ、マタハ何ラカノ生物カラ衝撃ヲ受ケタ可能性ガ高イネ」
「フレンズガ僕タチニ危害ヲ加エルトハ思エナイナ」
「フレンズニトッテ、僕タチハ食料ヲ供給スルナクテハナラナイ存在ダカラネ」
「ダトシタラ、セルリアンノ仕業ナノカナ?」
「ソウトシカ考エラレナイネ。通信ガ全ク入ラナイト言ウコトハ、取リ返シガツカナイホド故障シテイルニ違イナイ。何者カガ意図的ニ攻撃シタトシカ思エナイヨ」
場に沈黙が訪れる。
それぞれのボスが、機械音を出しながら何かを考えている。
しばらくしてから、ボスが口(?)を開いた(?)。
「マズハ、25号機ノ様子ヲ確認スルノガ良サソウダネ」
「ソウダネ」
「僕モソウ思ウヨ」
「25号機ノ状態ヲ見テ、原因ヲ見ツケ出ソウ」
「ジャア、全テノラッキービーストニ25号機ノ捜索願イヲ出スネ」
「了解ダヨ」
「僕タチモ捜索ヲ始メヨウ」
ラッキービースト達は、それぞれの方向に動き始めた。
「…なんて話、あったら面白くありません?」
サバンナの木陰。
生暖かい風に吹かれながら、リカオンが得意げに人差し指を立てた。
「そんな話、ありえるかって」
「まぁ、『もしも』の話ですし…」
腕を組んだまま顔をしかめるヒグマに、キンシコウが笑顔を見せる。
リカオンは身を乗り出した。
「いや、私は結構信じてるんですよ?! 実はボスの中にも中心的な立場のボスがいて、何かがあった時はそのボス達が他のボスに指示を出す、みたいな…面白いでしょう?」
「ま、確かにあったら面白いな」
『確かに』をやけに強調して応えるヒグマに、リカオンは頬をふくらませた。
「もぉ〜、まともに聞いてくださいよ〜!」
「あ、ボスが来ましたよ」
「おっ、丁度よかった。じゃぱりまん、もらってこよう」
「私行ってきます!」
リカオンが、すくっと立ち上がって機嫌良さそうにボスの元へと駆けていく。カゴからじゃぱりまんを三つ取り、こちらへ戻ってくるのを見ながら、ヒグマが苦笑いした。
「あいつ、ボスとじゃぱりまんの事になるとすーぐ機嫌良くなる」
「お腹空いてるんじゃないですか?」
「…まぁ、休憩時間くらい良いけどな」
「そうでしょ?」
「ハイ、じゃぱりまん、どうぞ!」
「ありがとな」
「ありがとうございます」
二人がリカオンからじゃぱりまんを受け取った瞬間、何者かの叫び声が、遠くからこちらへ近づいてきた。
「たーたたたたたたた大変なのだぁー!!」
「?」
「誰かが叫んでるような…」
「この声、聞き覚えがあるんですけど…」
「…あれは…アライグマと、フェネック?」
声のした方を見ると、眉を八の字にしたアライグマと、余裕しゃくしゃくな表情をしたフェネックが、三人に向かって走ってきていた。
「たーいへーんなのだー!」
「アライさぁん、そんなに大変って言わなくても良いんじゃないかなー?」
二人はハンターの前で走るのをやめ、近づいてくる。
「ぜえっ、はぁっ、はぁ……やっと見つけたのだ! セルリアンハンター!」
アライグマは膝に手をつき、息を切らしながら三人に話しかけた。
途端、ヒグマの表情が真剣になる。
「セルリアンが出たのか?」
「そうなのだー! 出たのだー!」
「どこですか?!」
「この辺りですか?」
リカオンとキンシコウも目付きを変える。
しかし。
「ホートクチホーなのだ!」
アライグマの突拍子のない答えに、ハンター達は口をぽかんと開けた。
「…は?」
「ホートク?」
「そうなのだー!」
「…あの、ここはキョウシュウですが…」
「ホートクには、ホートクのハンターがいるんじゃないですか?」
ヒグマに至っては、呆れて声も出ない様子だ。
「いや、キョウシュウにも関係があるのだ!」
「関係? どんな関係です?」
「昔ホートクに出た人型のおっかないセルリアンが、復活したのだ!!」
その瞬間、三人の表情が硬直した。
「何ですって…?」
「人型って…パークのヒトが全員撤退した原因の…?」
「そんなバカな、だって奴はスザクに…」
ここでやっと、フェネックが口を開いた。
「いや〜、どうやら封印が効いていなかったみたいなんだよね〜」
相変わらず、余裕のある表情だ。
しかし、ハンター達はそれどころではない。
あのセルリアンが、再び何かをしでかしたら。
ホートクだけでなく、今度は他のチホーも危機に晒される。
「…その情報は、誰から聞いたんだ?」
ヒグマの問いに、フェネックが答える。
「私たち、さっきまでホートクにいたのさ〜」
「えっ? どうやってあそこまで?」
「トキとショウジョウトキに運んでもらったのだ!」
「たまには他のチホーにも行ってみよっかな〜、ってなってね〜」
「そうなんですか…」
「色々と冒険していた中で、たまたますれ違ったフレンズに教えてもらったのさ〜」
「あと、ヒトもいたのだ!」
「…え? ヒト?」
ハンター達の表情が更に複雑になる。
「そうなのだ! お腹が空いてボスを探していたら、会ったのだ!」
ヒグマとキンシコウが、顔を合わせた。
「ヒグマさん、やっぱりヒトは…」
「いるってことだな」
「でも、優先すべきはセルリアンの調査だと思います。キョウシュウにいつ何が起きてもパニックにならないように、パトロールと呼びかけをしないと…」
「分かってる。まぁ、既に知っているフレンズがいれば、その内大騒ぎになるだろうけどな」
「とにかく、セルリアンを倒すのだ! みんなで力を合わせれば、どうにかなるのだー!」
「アライさぁん、そんなに簡単に倒せる相手じゃないってばー」
「そんな余裕な表情で言うななのだー!」
「そもそもキョウシュウのセルリアンじゃないしな」
「揚げ足を取るな、なのだー!」
「アライさぁん、落ち着きなよー」
セルリアンの噂は、至る地方へ広まっていき──
ハンター達が、セルリアン達が、動き出し始めた。
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