#40  あすか②

「ねぇママ、スカイレースってなにー?」

「鳥のフレンズさん達が、空を飛んで競争するのよ。その様子が、これからあのステージに映るんだって」

「なにそれ、すごーい! あとどのくらいではじまるの?」

「そうねぇ…プログラムには十時って書いてあるから、あと十五分くらいね」

「じゅうごふんー?! そんなにまちきれないよー!」

「じゃあ、パパがハチドリさんのジュース買ってくるか?」

「ほんとー?! わーい!」

 


「スカイレースだぁ? おま、そんなの見るために来たのかよ?」

「良いじゃねぇか、面白そうだろ?」

「オフの日に男四人でジャパリパークってのも、なかなか楽しいじゃん。それに、レースに出るフレンズ、かなり可愛いぜ?」

「あぁ、なるほど……!」

「ほらっ、あそこにいる子達とか……えっと、スカイ…インパルス? っていうチームらしいぜ」

「おおーっ…。良いな、ナンパしてこよう」

「アホか」

 


「驚いた。本当に、レベルの高いコスプレみたいな格好してるな」

「そうよねー…動物があんな風になっちゃうなんて、信じられない」

「やっぱりコスプレなんじゃないか?」

「やめてよ、現実的なこと言わないで!」

「あ、すんません…。」

「今私、すっごくファンタジックな気分なんだから。ほら、あのステージ上でガイドさんと話してるのがアフリカオオコノハズクさんで、あそこでお茶配ってるのがアリツカゲラさん……あ、お茶くださーい!」

「名前覚えんの早すぎだろ…」

 

 


「まったく。ヒトは本当に、バカ騒ぎするのが好きなのです」

 客席で思い思いに会話を交わす人々を見下ろして、ハカセは溜め息をついた。

 

「いやぁ、それが売りだからね」

 ガイドの女性は、頬をかきながら苦笑いする。

 

「ヒトと楽しそうに話すフレンズ達の気持ちも理解しがたいのです。あんなに騒いで、一体何が楽しいのか」

 

「そうか? ハカセは楽しくない?」

 

「冗談じゃないのです。ヒトが来てから、パークが不衛生になっているのです。ゴミは捨てるし、ログハウスには無断で侵入するし、もうメチャメチャなのですよ」

 

「なるほどね…確かにそれは良くないって私も思うよ。けど、現にハカセはヒトに協力してくれてるじゃんか」

 

「いやっ、それは……おまえが手伝えって言うから、仕方なく…」

 

「ごめんごめん。ホートクで一番賢いの、ハカセだからさ。つい手伝ってほしくなっちゃって……」

 

「お世辞はいらないのです! …お世辞ではないですが」

 

「ははっ。やっぱりハカセは頼りになるな」

 

「と、とにかく! ステージの鋪装を続けるのですよ!」

 

「はいはーい。よろしくお願いします、ハカセ」

 

「全くなのです! もう二度と協力しないのですよ!」

 

「分かったよ。じゃあ、第二回スカイレースでもよろしくね」

 

「アースーカーっ!」

 

 人々のざわめきに混じって、ハカセの声がステージに響いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る