#38  かめら

 ここはジャパリパーク

 

 高らかに 笑い合えば フレンズ

 

 喧嘩して すっちゃかめっちゃかしても 仲良し

 

 本当の愛は ここにある

 

 ワンツースリー!

 

 ようこそジャパリパークへ

 

 今日もドッタンバッタン大騒ぎ!

 

 姿形も十人十色

 

 だからひかれあうの

 

 夕暮れ空に 指をそっと重ねたら

 

 初めまして 君と友達になりたいな

 

 うー がおー!

 

 

 後から聞いたが、四人組が演奏するこの曲は「ようこそジャパリパーク」と言うらしい。

 

 何だか、歌詞の所々に物足りなさを感じるのは私だけだろうか?

 どうやら、過去に人間が作曲した歌を覚えている限り再現しているらしいので、大目に見てやろう。

 

 ショウジョウトキさんは、あれから練習を重ねた結果、歌詞を交えて歌えるようになった。音程も合っているし、声質も透き通っていて綺麗なので、その変わりようには博士も驚くことだろう。

 

 そして問題のトキさんも、伝授したキーボードの飲み込みが予想以上に早く、ほとんどの音程を半日で覚えてしまった。あんなに音痴なのに、音感はあるらしい。まぁ、はっきり言ってかなり簡単なフレーズなので、あっという間に覚えられると言えば覚えられるのだが…。

 

 そんなこんなで、二日目の練習はかなり順調だった。

 午前には演奏はほとんど完成したので、これならきっと、博士も認めてくれること間違いないだろう。

 

「フーカ、私達、ちゃんと演奏できてる?」

 

「うん、すごく良い感じだと思うよ。これなら博士も認めてくれるはず」

 

「ほんとっすかー! よかったー、これでステージにも出れますね!」

 

「これもショウジョウトキの歌のおかげですね! (ドヤァ)」

 

「最初はどうなるかと思ったけど、フーカのお陰だわ」

 

 倉庫の屋根上でお昼のじゃぱりまんを食べながら、四人は歓喜の声を上げた。

 屋根から見る山脈はとても綺麗だと言われ、トキさんに上げてもらったが、確かに向こうの山までよく見えて綺麗だ。

 

 ここで私は、ポケットからスマホを取り出した。

 

「じゃあ、午後はこれを使おう」

 

 電源をつけ、ホーム画面を四人に向ける。

 瞬間、四人は一斉にスマホ画面に釘付けになった。

 

「あ、これ、昨日言ってたやつ!」

 

「えーと…かめら、でしたっけ?」

 

「そう、カメラ。じゃあ、早速使ってみよっか」

 

 私は画面をカメラに切り換え、こっちを見つめる四人をパシャリと撮った。

 その撮影音に、四人は「わっ」と声を上げる。

 

「ほいっ」

 

 四人の顔が撮れた写真を見せると、フレンズ達はぎょっとして見開いた。

 

「す、すごい……!」

 

「どうなってるんすかー?!」

 

「これはね、目の前にある景色を画面として保存することができるんだ。ざっくり言うと、そんな感じ」

 

「がめん……に、保存?」

 

「分かりません! (ドヤァ)」

 

「まぁ、使ってる内に覚えて。これで、みんなの演奏を撮ろうと思う」

 

「演奏を…取る?」

 

「とりあえず、午後の練習でやってみよう」

 

 四人は頭に疑問符を浮かべたままだったが、百聞は一見にしかずだ。実際にやって見せた方が、彼女達には分かりやすいだろう。

 

 じゃぱりまんを食べ終わり、倉庫の中へ戻ると、四人は早くカメラを使ってほしいと言わんばかりにすぐに定位置についた。

 

「早速演奏するっすよー! フーカ、よろしくっす!」

 

「えっ、もう?」

 

「そのかめらってやつを早く使ってみたいもん!」

 

「まぁ、良いけど……じゃあ、オッケーって言ったら演奏始めて」

 

「はーい」

 

 四人は元気よく返事した。

 私は録画ボタンを押してから、いいよー、と手を挙げた。

 

 スマホの画面には、楽しそうに演奏する四人の姿がきちんと映っている。

 たったの二日でここまで成長するとは、思ってもいなかった。何よりもトキさんとショウジョウトキさんの歌には手こずったが、結果オーライだ。

 四人は、明日の午後に博士を呼びに行くそうだ。もちろん、私もついていく。最終的な責任者は、四人を任せてと言い張った私であることは忘れていない。

 

「オッケー、撮れたよ。じゃ、見てみよう」

 

 四人がスマホを囲み、画面を見つめる。私は再生ボタンを押した。

 先程の演奏の様子が、音声を交えて流れる。

 

「おー! すごーい!」

 

「何ですかこれは?! 魔法ですか?!」

 

「いや、魔法じゃない……とにかく、これを見て気づいたこととか、気になったこととかを言い合って直せれば、最後の仕上げになると思うよ」

 

 それからは、演奏しては意見交換の繰り返しだった。

 ここのリズムが合ってない、じゃあもう一回やろう、ここの音程を間違えてる、じゃあフーカもう一回とって! と、こんなやりとりをひたすらしている内に、日が傾いてしまった。

 

 私は、暗くなる前にトキさん達にログハウスまで送ってもらうことになった。


「ごめんね、今日もわざわざ……」

 

「良いのよ。本当はもっと良いお礼をした…」

 

「あーっ! 思い出したーっ!」

 

「わっ!?」

 

 後ろを飛んでいたショウジョウトキさんが突然大声を上げ、私とトキさんはばっと振り替える。

 

「ど、どうしたの…?」

 

「ずっとモヤモヤしていたのですが、やっと思い出しましたよ! あのかめらってやつ、スカイレースが終わった後にアスカが使ってたのと同じですよね?!」

 

 それを聞いて、トキさんもはっとする。

 

「あ! 確かにそうだわ、みんなで集まった時でしょ」

 

「そうです! アスカが机の上に置いて、あれに向かって笑ってー、って言ってたやつです!」

 

「あ、その写真ってもしかして、アリツカゲラさんのログハウスにある…?」

 

「そう、それです! しゃしんです!」

 

「そういえばそうだったわね、懐かしいわ」

 

 なるほど。やはりアスカも例に漏れず、カメラを使っていたらしい。

 

 それにしても、アスカと私の繋がりをそろそろ知りたいところだ。

 あれだけ顔が似ているのだから、何か関係性があることは間違いない。

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