#28  としょかん

「ヤタガラス様に…ですか?」

 

 ウグイスさんは首を傾げる。

 

「そうです。ヤタガラスさんならスザクさんと親交があるらしいですし、フレンズ達の力になってくれると思いますよ~」

 

「確かにそうなのです。仮にスザクが勝負をしかけてきたとしても、彼女なら対抗できるかもしれないのです」

 

「え、勝負?」

 

 私は思わず声を出す。

 

「スザクは、勝負で勝てば願いを聞いてやろうと言うことがあるのです。何でも、自分の化身と戦わせるんだとか。かなり強くて、フレンズが何人がかりで挑んでも勝てないそうなのです」

 

「じゃあ、そのアスカさんが行った時も勝負したの?」

 

「いえ、その時はヒトの頼みならば仕方ないと承諾してくれたのです。本当に気まぐれなフレンズなのです。彼女も、アスカのことはかなり気に入っていたようですが」

 

 アスカを、気に入っていた…?

 ここで、私の脳裏に一つの考えが浮かんだ。

 

「あの、思ったんだけど…私、アスカさんと似てるんだよね?」

 

「? 確かにそっくりですが」

 

「なら、私がアスカさんのフリをして行けば良いんじゃない?」

 

 なかなか良い提案だと思ったのだが、博士は眉間にしわを寄せて、

 

「そ、それは駄目なのです」

 

 と、答えた。

 

「え? 何で?」

 

「おまえがアスカのフリなんかしたら、スザクをずっと騙していなければいけないのですよ? それに、彼女はすぐにフーカの正体を見破ってしまうでしょう。スザクを怒らせたら、それこそパークの危機なのです」

 

 なるほど。確かにそうだ。

 この作戦はボツになってしまった。

 

 では、やはりそのヤタガラスさんとやらに頼むしかなさそうだ。

 

「じゃあ、ヤタガラスさんってどんなフレンズなの?」

 

「彼女も伝説上の生物で、太陽の化身として崇められていたと本には書いてあるのです。それなりに力もあるし、彼女はスザクと違って喜んでフレンズに協力してくれるのです」

 

「ヤタガラスさんは、普段はハシブトガラスさんと行動しています。今はここにいらっしゃいませんが、多分図書館でお仕事をされていると思いますよ」

 

 リョコウバトさんの言葉に、博士も頷く。

 

「今ここにいるフレンズの他にも、鳥のフレンズは何人かいるのです。他のチホーにいたりとか、たまたま噂を聞かなかったとか、色々な理由があってここにいないのでしょう」

 

 一体、この世界には何種類のフレンズがいるのだろうか?

 これ以上フレンズの名前を覚えるとなると、頭がおかしくなりそうだ。

 

「では、私は図書館に行って参ろうかと思います。きっと、ヤタガラス様と頼みに行けばスザク様も聞いてくださるはずです」

 

 ウグイスさんは、安心したようにそう言った。ひとまず、花火の件はどうにかなりそうだ。

 

「ウグイスが図書館に行くのなら、アキも同行したら良いのでは? そうすれば、アキの本当の名前も分かって一石二鳥でしょう」

 

「あ、そういえばそうでした! ウグイスさん、一緒に行っても良いですか…?」

 

「はい、もちろんです」

 

 確かに、この前博士が「図書館に行けば分かる」と言っていた。だが、フレンズは博士と助手以外文字が読めないんだろうし、行ったところで図鑑から調べ出せるのだろうか?

 私が同行する、という手もあるが、私はここにいてフレンズ達を総括する必要がありそうだ。

 

「ねぇ博士、図書館に行ったら、どうやってアキちゃんの名前を探すの?」

 

 私の質問に、博士は「簡単なことです」と答えた。

 

「それはもちろん、図鑑で調べるのです。フレンズと似た容姿の動物を見つけ出して、その名前を図書館にいるフレンズに読んでもらいます」

 

「博士以外にも文字が読める子がいるの?」

 

「いるのです。そう多くはありませんが。ヤタガラスもその中の一人なのです」

 

 なるほど。それなら丁度良い。これでアキちゃんの名前がやっと分かりそうだ。

 

「これで全員分担が決まりましたね。ではフーカ、どうしましょう?」


 また突然、博士が話を振ってきた。


「はい?」


 私は、すっとんきょうな声を上げる。

 

 博士も、良い加減私に丸投げし過ぎではないだろうか…?

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