#14  かんゆう

「ほえ? フェスティバル?」

 

 灰色の髪の毛のフレンズが、紫色のリストバンドのついた手を頬にあてて首を傾げた。

 

「そうよ。ヒトがいた頃の盛り上がりを取り戻したいの」

 

「この前のレースの比にならないくらい大きなイベントにしたいの! 協力してくれるかしら?」

 

「協力するのは良いけど……どんなことするの?」

 

「それを今から決めるのよ! グループで色々やってる子達がいるじゃない? 歌とか劇とか……」

 

「あぁ、確かにいるね」

 

「あの子達にステージに出てもらおうって思ってるんだ。だから、勧誘を手伝ってくれないか?」

 

「カワラバトなら、私達と同じくらい速く飛べるからね」

 

 カワラバトと呼ばれたフレンズは、しばらく青空を眺めながら考えて、

 

「うーん……じゃあ、ヘビクイワシあたりに声かけてみるよ。きっと、まだ演劇っぽいのやってるから。でもあそこはあまり仲良くないから、間違いなくトラブルが起きるってことは請け合いで良い?」

 

 と答えた。

 

「全然オーケーよ! 今はどんな子でもメンバーになってもらうしかないわ!」

 

「分かったよー。任せて。じゃあ、三日後の朝にひでり山の頂上だね」

 

 カワラバトが飛び立った後、残された三人組は、次に探すべきフレンズを考えた。

 

「…今のところ、何人誘えてるんだ?」

 

「とりあえずスカイダイバーズとイワシャコのバンドはオッケーよね? クジャク達のお店にもオッケーもらえたし…。あと、グループで何かやってるのは……」

 

 しばらく、沈黙が続いた。

 

「…いざ探してみると、あまりいないわね…。」

「あぁ、あまりいないな」

「そうね…」

 

「こうなったら、見つけたフレンズから片っ端に誘っていくわよ! とりあえず三日後に集まってもらってから、何をするか決めれば良いわ!」

 

「でも、それだとフーカの指示と少し違くない?」

 

「そうだけど、きっとあの子ならどうにかしてくれるはずよ! ハカセが認めるほど賢いらしいんだから」

 

「らしい、ってだけで実際は分からないけどな…」

 

「でも、あの子、似ているわよね」


「!」

 

 タカの『似ている』という一言で、場の空気が一気に張りつめた。

 

「似ている、って…?」

 

「みんな気づいてるんじゃないかしら? アスカよ、アスカ」

 

「………」

 

「そ、そうかしらね……?」

「え? 気がつかなかったの?」

「いや、うん、何となくそんな気はしなくもなかったけど…」

「それ、気づいてた、ってことでしょ?」

「そ、そうね、そういうことになるわね、まぁ…」

 

「変なことを話している暇があったら、考えよう。ダメ元でトキとショウジョウトキに歌を頼むってのはどうだ?」

 

 ハヤブサが、厳しい口調で話を切り替えた。残りの二人は一瞬、まずい、という顔をしてから、必死に反応する。

 

「そ、そうね! トキ達に頼むってのもありかもしれないわね! ちょっと歌がアレだけど…」

「た、確かに、あの子達の歌でステージが壊れたりしたら大変なことになるわよね…」

「で、でも、やっぱり呼んだ方が、本人達も喜びそうだし…」

 

「あら、私の話してる?」

 

「わあぁぁぁぁっ?!」

 

 突然、背後から聞こえた四人目の声に、三人組は驚きの声を上げた。

 

 見ると、赤いフリフリを付けた白い服に赤みがかったスカートを履いたフレンズが、ちょこんと立っていた。

 

「と、トキ…ビックリしたわ…」

 

「私は、そんなに驚かせるつもりはなかったのだけれど…」

 

 すると、トキの後ろから、真っ赤なフレンズがひょっこりと顔を出すや否や、強烈なドヤ顔をした。

 

「ちょっとちょっと! ショウジョウトキも忘れないでほしいんですけど! (ドヤァ)」

 

「あら、ショウジョウトキまで……丁度良いわ。今、二人に声をかけに行こうと思っていたところなの」

 

「何ですか?! 一曲歌いますか?! (ドヤァ)」

 

「ノーーノーノーノーノーノー! 後で聴くわ! 全く違う話よ!」


 ショウジョウトキを必死に止めるハクトウワシに、トキが首を傾げる。

 

「何かしら?」

 

「実は、1ヶ月後に大きなフェスティバルを開こうと思っているのよ。ほら、ヒトがいた頃によくやっていたイベントがあるじゃない? あんな感じで、たくさんのフレンズに出演してもらって…」

 

「ついでにショウジョウトキ達にも出演してほしいと?! (ドヤァ)」

 

「そ、そういうことよ…」

 

「そうと決まれば練習ですよ、トキ! 目標であるPPPに一歩近づくチャンスてす! (ドヤァ)」

 

「ちょっとショウジョウトキ、落ち着いて…。それで、私達にステージで歌ってほしいってことかしら?」

 

「そうよ! オーケーしてくれるかしら?」

 

「もちろんオーケーよ。むしろ、こっちからお願いしたいくらいだわ」

 

「ありがと。それじゃ、私達は他のフレンズの勧誘に回らなくちゃいけないから、とりあえず、三日後の朝にひでり山の山頂に集合してもらっても良いかしら?」

 

「分かりました! それじゃ、お礼に一曲歌いますよ! (ドヤァ)」

 

 ショウジョウトキがすっと息を吸った瞬間、三人組が必死で止めに入る。

 

「ストップ、ストップ! 歌はまた三日後にね!」

 

「えー? 何でですかー?」

 

「そ、そうだ、フェスティバルにはなるべく沢山のフレンズに出演してもらいたいから、ホートクチホーを回って鳥の子達を勧誘してくれないかしら?」

 

「分かったわ。じゃあ、私達なりに歌で宣伝するのが良いわね。ありがとう。じゃあ、また三日後に」

 

 トキコンビが飛び去った山の向こうから、二人の歌のような叫び声が聴こえてきたのは言うまでもない。

 

「ま、まぁ、何とかなりそうね…」

「メンバー、増えてくれると良いな…」

 

 

 三人組のピーアールは、まだまだ続く。

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