第24話 傀儡師の一手
一宮が目を見開いた。全身が石のように固まり、動けなくなった。
後ろには誰か立っている。
「その人形で操れるのは一人だけ。一人を選んだら他の人は選べない。そう
白く細い手が音もなく伸びて、一宮の頬を包み込む。
「
抑揚のない声が静かに絡み合う。
「でも、
「
余命宣告のような重い一言のあと、一宮の足元から人形の腕が伸びる。抗う一宮の力をものともせずに地獄の闇へと引きずり込む。縋るように腕を伸ばしても、誰も掴まなかった。喉を裂く断末魔の叫びと共に沈んだ。
その場に残った男性の人形を拾う…………おそらく少年。
絹のようにきらめく銀髪に陶器のような肌。澄んだ瞳は『無』を映す。
「ソレもちょうだい。君と
薫が人形を手渡すと、人形をじっと見つめて無言で首の石を奪い取る。隼の石も引きちぎると、遠くへと投げ捨てた。
「返して。君に必要ないでしょ」
鍼を引き抜き振ってみる。風が自分の周りを踊って消えた。能力が戻った。
薫も指を鳴らして火をつける。暴走せずにちゃんと手の内に収まっている。
「客は選べよ」
薫の一言に足を止めた。だが一切こちらを向かない。
「誰がどんな目的で来たって
あっそ、と薫は呆れる。
キョトンとして置き去りになった柊馬と聡明。何が起きたのかわかっていない。
「ねぇ、今の人誰?なんで先生は消えたの?なんで二人とも風とか火とか……」
「ここはどこだよ。あの女の子は?」
質問ばかり飛び出す二人を立たせ、「先に行ってろ」と扉の方を向かせる。薫は寂しげに微笑んだ。
扉へと向かう二人の背に、隼は銃口を向けた。その場に佇む少女に、薫は右手を突き出した。
二発の銃声の後、肉の焼ける臭いがした。
仲良く眠る二人を担ぎ、地上へと足を進める。冷たい靴音が響く。しかしすぐに消えた。そこには何も残らなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます