第3話刑事課主任、帰還 2
目を覚ますと見慣れた刑事課の事務室。体を起こすと男花魁に正座させられる女の姿があった。反射的に飛び退くと、薫がスポーツドリンクを差し出した。
「今お菊が説教中。起きたらすぐに水分補給しろってさ」
煙管片手に仁王立ちで女を見下ろす花魁・お菊は鬼のような形相で威圧する。
「部下を追い回すのは禁止ってわっち言いんしたよな?」
「はい……」
「署長からも直々に注意を賜りんしたな?」
「はい……」
「あんたのお陰で森の一部が破壊されるわ設備が黒焦げになるわの大損害でありんす!一週間の自宅謹慎か、半月のエリア侵入禁止か選びなんし!」
「そんなっ!そんなぁっ!私の部下への想いを…‼
「知るか!反省しろ!」
「いやぁぁぁぁあ‼」
床に伏して無様に泣き崩れる女を水越しに見つめた。お菊は眉間に皺を寄せたまま隼の隣に座り、最後の煙を吐き出して煙管をしまう。隼の頬に触れ、顔色を確認する。
「具合悪いとかありんせん?」
「大丈夫です、けど……。あの……森壊してすみませんでした」
「不可抗力でありんす。あの一撃に体力以上の力を使ったようだし……。無事なら構いんせんが」
「えっ、そんなに怖かった?」
立ち上がって迫り寄る女をお菊の足が一定の距離で制御する。薫と視線を合わせ、苦い顔で首を縦に振った。あれは怖いなんて一言で片付かない。
トラウマ。人生に刻みつけられるレベルの深いトラウマ。
女は床に座り込んで頭を抱える。頭を掻きむしりブツブツと呟いたかと思うと、力無く両腕を床に落とした。
「どうけじめをつけるのか、聞かせてもらいんしょう」
お菊の冷たい視線が女に注がれる。女は即座に立ち上がり、模範的な敬礼をする。ぼろぼろと零す涙を拭いもせず、大きな声で宣言した。
「刑事課主任・
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