【 レジリエンス 】

誰かの溜息で

紅く染まった紅葉

風に巻き散らされて

紅い絨毯が敷き詰められた

一歩 歩む度に

カサッ カサッ 

と、小さな悲鳴を上げる

その一枚を拾って

空に翳してみれば

紅い残像が

瞼の裏に焼きついた


季節を追うと

遠くへ 遠くへと

逃げていってしまうから

この寂しさは

何処へ捨てにいこうか


静謐な秋の日に

掌の中で光を放つ

朱色の実が甘く熟れてゆく

季節はいく度も再生しながら

真っ白に純化する

気持ちひとつで

寒い季節も越えていけると

折れない心

拳を握り

空を見上げて

雲の行方は風に訊けばいい




 【 楓 】


晩秋の頃

血を吐くように

楓はあかく染まる

握り拳ほどの肉塊

女はからだに楓をはらんだ

命の蘇生

輪廻転生する魂

春になれば

再び芽吹いて

小さな掌をばす

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