【 雨粒 】

降りつづく雨のせいで

部屋の空気が重く感じる

ポツリポツリと奏でる サティのピアノはけだるい

大きめのポットにダージリンティを入れて

ゆっくりと茶葉の広がる時を待つ


雨の匂いと紅茶の香りが混ざりあって

不思議なやすらぎを覚える

そんな雨の日の午後が好きだ


一粒の雨粒が水紋となって広がっていく


あの人から手紙がきた

それは家から少し離れたポストに入っている


まるで迷路のような複雑な記号で出来た

あなたの詩は いつも徒にわたしを悩ませる

『 僕はひどく優しいからとても罪深い 』

人の痛みを知ろうとしない 

あなたは一生優しい人のままで居られる


全てのノイズを遮って祠の中に閉じこもる

少しでも触れよう伸ばした わたしの手を

あなたは冷たく払い除けた

虚しく空を掴んだその手に 一粒の種をくれた

それは創作のエナジーとか詰まった種だった


良く育つように

良く育つように

そう言って わたしのために祈ってくれた


一粒の雨粒が水紋となって広がっていく


あなたから手紙がきた

それは一言添えるだけの絵葉書


熱いダージリンティを飲み終えたら

赤い合羽を着て出掛けよう 傘はいらない

雨の中いきおいよく水たまりを踏んで 

小走りで取りに行こう

家から少し離れたポストまで


手紙はポストから取り出した瞬間

雨粒たちに掻き消されて 

文字が読めなくなってしまった……

たぶん 

それはあなたのノートの切れはしに

書かれた複雑な記号だったかも知れない

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