エッフの心理戦

名前負けするエピソードじゃないかなんていわないでね。


何年も前の話。夜、出かけ先からの帰途にて、歩道を私物化してバイクやらなんやらを置きまくってる近所でも有名な迷惑な一家の横を自転車を転がしながら通っていたら、路駐してあったその家の軽トラにペダルがぶつかってガコンっていう音がしたんですね。


(やばい)


と思ったんですが、どうしたらいいかわからずとりあえず逃げるか。と無視することにしたんです(無能)そしたら運が悪く、ガラの悪いその車の持ち主が外に出ていて…ゴルァァァって、聞いたこともないような怒鳴り声が辺りに響き渡りました。


(やばすぎる)


と震え上がる俺だったんですが、ブチギレてるガラの悪いのに真正面から当たるのは怖すぎて後ろを振り返れなかった。しかし、前は入り組んでいる道でもなく、出かけ先からの帰り道だったので疲れていて自転車をこいで逃亡するエネルギーもない。どうしたものか…と思うと同時に、この窮地を乗り切る「策」を思いついてしまった。


(いや、ここはむしろ堂々としている方が相手を撹乱できる)


続く一本道を、私は自転車を転がしながら歩いて上りました。まるで、何事もなかったかのように。ガラの悪い奴は、夜陰で誰がぶつけたかを判別できているか怪しい。であれば、走って逃げると自分が犯人であることをバラしてしまう。後ろも振り向かず堂々と歩いていれば、奴の怒りに「こいつが犯人かどうかわからない」という迷いの感情を生じさせ、追跡をやめるかもしれない、と踏んだわけです。ほぼ賭けですけど。しかしこの心理戦は見事的中。途中まで奴は追ってきましたが、捨て台詞のようなものを吐くと踵を返していきました。「待てや!」と言ったら待ったのにね。

でも、最悪のケースとして俺は次を考えます。あくまで、心理戦を仕掛けたのは「一番怒ってる状態の相手に正面からぶつかるのは良くない」から。俺が近所にいる可能性が高いとしれた以上、その後もし相手が執念深くて自転車や僕の服を目印にストーキングしてうちを探し当ててきて訪問してくるなどという事があると厄介な事になる。ということで、少し時間が経ってからちゃんと謝りに行きました。すると、やはり車の持ち主の怒りは収まっており、見れば傷もほとんどついておらず、そもそもぶつけた箇所は修理に出す予定だったとの事。穏便に事が済みました。深入りは面倒だから、路駐辞めろだ、撤退しろだなんだは直近の近所の人と警察に任せる。


イキリオタクの上位互換みたいになりそうだからこれ以上は自重。

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