団欒



♯12


青柳「まったく…昨日は散々な目にあった」


照彦「まーさか自販機で買ったジュースにあたって意識飛ぶほど腹下すとは思わなかったな」


青柳「…………………」


翔真「まぁ一晩で退院できただけよかったじゃん」


照彦「二度と自販機のジュースなんか買うか!」


翔真(どんな記憶の変えられ方だよ…)


〜〜〜〜回想〜〜〜〜


「治癒班の中には脳を治せる者もいましてね。ここに運ばれた時の貴方は脳がパンクを起こしそうだったので、少し処置をしました」


翔真「はぁ……」


翔真(それでか…『眼』を使ってた時よりだいぶ頭の重みみたいなのが取れた感じがするのは…)


「治せるということで、脳をいじる能力ですから、記憶を消したりすり替えたりもできます。ということで…」


シャッーー。


翔真「テル…!青柳!!」


「彼らの記憶も消さしていただきました。身体自体にそこまで酷い外傷は見られなかったので、明日には普通に生活に戻れるかと」


翔真「………俺の記憶は消さないんすか?」


「……………」


翔真「昨日の今日で異能に足を踏み込んだんだ。今ならまだ引き返しがききますよね?眼と脳の連結も高いわけだし、記憶を消せば、イビルフォーカス自体も自然に出てこなくなる可能性もありますよね」


「鋭いですね。もちろんそれも検討しました。しかし、その『眼』はそう簡単に、そうさしてくれないようで。」


翔真「……どういうことすか?」


「イビルフォーカスから脳に送られる情報など、ただのおこぼれに過ぎないって事です。イビルフォーカスはその『眼』自体に記憶を保存できるようで。貴方の記憶を消そうが、目を覚ました途端、全て思い出して終わりです。」



「これから貴方には険しい道が待ってますよ……。それなりの覚悟をお持ちになられてください」


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


翔真「…………………」


青柳「どうした日坂」


翔真「…ん、悪い悪い。なんもねぇ」


照彦「じゃあ今日は俺らの無事を祝ってこのままカラオ…

青柳「メイドカフェだな」


照彦「え゛ぇぇっ!!!?」


青柳「当たり前だろ。昨日は行けなかったんだ。昨日行けなかった分は今日行くんだよ」


照彦「嫌だい嫌だい!!な!翔真もカラオケ行きたいよな!!」


翔真「俺は…」


円香「日坂くーん!!」


翔真「あ、東雲」


照彦「何をぅ!!!?」


照彦「ちょっと待てテメェこら!!なんでお前が東雲円香なんかと…!」


翔真「わり、俺ちょっと行くわ」


青柳「じゃあ俺たちも行こうか」ズリズリ


照彦「離せぇぇぇぇえ!!!!!殴ってやる!翔真の野郎殴ってやる!!!」ズルズル


円香「ごめんね。友達と出かける予定だったの?」


翔真「いや、予定はなかったけど」


円香「昨日のお礼したくてさ。よかったら今日ウチでご飯食べてかない?」


翔真「ブフォッ……!東雲ん家でご飯…!?」


円香「ちょっとお父さんがうるさい人だけど、今後の事についても話しておきたいなって」


翔真「今後の事…」ブフォッ...


円香「……いいかな…?」


翔真「あ…あぁ」

翔真(やばい…東雲にそんな意識はなくても…変に聞こえちまう…)


円香「うん!じゃあ決定!」



円香「…….…へぇ…。じゃ、日坂君て一人暮らしなんだね」


翔真「親父は物心ついた時からいなかった。お袋は海外飛び回ってるし」


円香「そうなんだ。やっぱりご飯誘ってよかった!」


翔真「え…?」


円香「みんなで机囲んでご飯食べるのとか最近してないんでしょ?」


翔真「まぁ…」


円香「着いたよ。ここが私の家」


翔真「おぉぉお…ふ」


高い塀に囲まれたTHE・和風な家。庭には蔵や池があった。


翔真「で…でけぇ……」


円香「さ、上がっていいよ」ガラガラ


円香「ただい……」



ドドドドドドドド


「まっどっかぁぁあぁぁあ!!!」


円香「シュバルツ!!!」シュルルル!!!!


「むっ!!シュバ公!邪魔をするなぁ!!!」


シュバルツ「宗太郎。その出迎えはどうにかならないのか?」


「貴様が邪魔をする限り…俺の進撃は止まらん…」キリッ


翔真(…なんだこのおっさん…)


円香「ちょっとお父さん!友達来てるんだからやめてよ!」


翔真「お、お父さんっ!!?」


東雲パパ「何ぃ!!?友達だと!それは歓迎せねばならんな!!」


東雲パパ「よく来たな円香のご友人とやら!俺がこの東雲家の大黒柱こと、東雲宗太……ろう……」


翔真「……ども………」チョコン


東雲パパ「誰じゃ貴様ぁぁあ!」


翔真(ハイテンションだな…)


東雲パパ「ついにこの時が来てしまった…ヒグッ…円香が男を連れ込んで…エグッ」


円香「ちょっ…変な言い方やめてよ!」


東雲パパ「ええぃ!!母さぁん!!猟銃を持ってきてくれぇ!そのどタマぶち抜いてやる!!」


翔真「えぇっ!!?」


「ウチには猟銃なんかないですよー」


東雲パパ「そういえばそうだったな!ガハハハ!!」


円香「はぁ…恥ずかし」


東雲パパ「お前が今日我が家でディナーを食べる…ディナーって響きかっこいいな……ディナーを食べるご友人か!!!男であれば容赦はせんぞ!!」


東雲パパ「東雲家の敷居をまたいだからには米粒一つ残すことは許さん!!!残した時は猟銃でぶち抜いてやる!!」


「だから猟銃ないですってー」


東雲パパ「それもそうだな!ガハハハ!!」


東雲パパ「本来ならば男は問答無用で返すところだがな。



……お前…異能者だろう」


翔真「……!!!」

翔真(……なんで気付いた…!?)


東雲パパ「円香が連れてきたということは、円香が誘ったってことだ。


ということは少々円香が世話になったか…。」


東雲パパ「ゆっくりしていけ…ボウズ」


縁側に腰掛ける翔真


翔真「…………」


円香「もうちょっとで出来るから待っててね」トットットッ


翔真「おう、サンキュー」


翔真「そういえば外で聞きにくかったから言わなかったけど…処分てどういうことだ?」


円香「ちょっと大学で暴れすぎたみたい。連絡棟ボコボコにしすぎちゃったかな」


翔真「おかげで第2キャンパスで授業だったもんな」


円香「あれだけおっ広げに痕跡残しちゃった……謹慎処分だって」


翔真「……そうか…」


円香「でも今はスッキリしてる……賞金稼ぎは…しばらく休業」



円香「私は長い間、負の感情に身を任せすぎた…。戻れるかな」


翔真「………いいんじゃないか?」


翔真「人よりも頑張ってきたんだ。今は少しくらい腰掛けたってバチなんか当たりゃしねぇよ。


今からは学校楽しんで、友達いっぱい作って…遊びに行って…どんどん昇華していけばいいんだ」


翔真「ゆっくりでも登ってけば…そこから見える景色は前よりいいはずだからさ」


円香「……………!!!」


円香「うん!!!」

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