Watchers Tomorrow

カスロム

プロローグ






厨二病とは


中学校2年、すなわち14歳で発症する事が多い思春期独特の思想、行動、価値観が過剰に発現した病態である。


多くは時間の経過と共に自然治癒するが、稀に慢性化、重篤化する事がある。


症状としては以下

・親に冷たい態度をとる(母親の事をおかん、おふくろ呼び)

・孤独を好むようになる。いわゆる孤高。

・突然ブラックコーヒーを飲みだす

・洋楽やロックを聴き始める


など様々な症状があり、さらには不良がりたがるDQN系、

メジャーなものを馬鹿にしマイナーな物を好む自分を、あたかも賢いように語るサブカル系

…そして超能力、魔法、秘密結社に憧れて、自分には隠された才能があると思い込む邪気眼系

など、分類も豊富であり、その発病件数は年々増えつつある…。





人の眼に映るものは視界に入ってる内の、ほんの数%である。

でもそれを僅かなものである事を誰も知らない。

誰もその数%しか見えてないから


しかし、その数%が突然100%になったとしたら、

人は何を見るのか

その先にどんな答えを得るのか



「……おい聞いてんのか翔真!!」


翔真「…へ?」



「夏休みの予定!もう後1ヶ月ちょいで夏休みだからさ!今みんなに予定聞いてるとこだろ?どこ行くー?とか、いつ空いてるー?とか!」



翔真「あぁ…悪い悪い、考え事してて」アハハ



「はぁ…な翔真君。そんなんだからいつまで経っても彼女も出来ないんですぜ?」



翔真「お前だっていないだろ…それに彼女欲しいーなんて一言も言ってないしお前何勝手に女子まで誘おうとしちゃってんの!?」



「グハハ!俺はちょっと前別れたばっかだから、まだお前らみたいな下等な完全フリー枠には入ってないのだ!それにぃ、そんな興味ないみたいな態度とっちゃってるけど実は欲しいんだろ〜?彼女」


翔真「まぁそりゃぁ…欲しくないといえば嘘になる…」


「だ・か・らー。俺が取り合ってやるからさー。女の子と遊びにこー?」


翔真「んぐぐ…」


「でさでさ!翔真はどっか行きたいとことかあんの?」


翔真「……遊園地とか?」


「ぐはっ…!オメェはバカか!夏だっつってんだろ!もっと夏らしいこと考えろよ!遊園地なんて冬でも行けるでしょうが!!」



俺の名前は 日坂 翔真。私立能登大学に通う大学2回だ。

今この高校からの友達 赤津 照彦に夏休みの予定を勝手に決められてる。



翔真「テルは何処に行きたいんだよ」


照彦「やっぱり海だな」キラキラ


照彦「考えてもみろ!同級生のヘソって見たことある!?」


翔真「ないな…」


照彦「ようし!じゃあまず海決定なー!!」


翔真「ん…もうこんな時間じゃん。そろそろ青柳も授業終わる頃だぞー」


照彦「じゃあ今からは青柳も加えて作戦会議な!」ニシシ



これまで特に贅沢もなく不自由もなく、山も谷もほとんどない普通の生活を送ってきた俺。

でもそんな俺にも普通でないことが一つ



厨二病が治らない。


厨二病。能力に目覚める妄想したり、とにかく自分をよりカッコよく取り繕うとする14歳くらいに発病しがちなあれだ。


確かに、14歳くらいにて発病した。してしまった。


バトル系の深夜アニメを観たのがキッカケだった。

それまで燻っていたものが弾けて、まだ何も知らない中学2年の俺は


予言の書とかいうノートを書いたり

怪我もしてないのに左手に包帯巻いて行ったり

俺って実はすげえ悲惨な境遇なんだぜ、みたいな事を言って回ってた。


それをズルズルと引きずり高校まで持ち込んでしまった結果


中高でついたあだ名は『厨二坂君』と『左手』。


今思い出しても死にたいくらい。


しかもまだ完治してないオマケ付き


しかし、俺は二度同じ轍は踏まない


幸いにも高校から同じ大学に来たのはテルだけ。


俺はこの大学で穏便に過ごすと決めたんだ!!



青柳「すまん。レポートを書くのに時間がかかっていた。」タタッ...


照彦「青ちんも翔真ももう授業ないよな?」


翔真「俺はもうないぞー?」


照彦「よしっ…じゃあ食堂に女の子漁りにでも行きますか!!」


〜〜〜食堂〜〜〜


青柳「さすがに3限の終わりは人も少ないな」


照彦「ちぇー、もっと女の子いっぱいいると思ったの… ドンッ


照彦「痛ってー!んだよ翔真!さっさと歩け…ん?」


翔真「…………」


照彦「何ぃ?あそこの本読んでる女ぁ?……」ハッ...



照彦「あちゃーその目」ヤレヤレ


青柳「一目惚れだな」


翔真「えっ…あっ…」


照彦「ストップストーップ!!あの子は止めとけ止めとけ」


翔真「は?…はぁ!?いや、誰もそんな…!」


青柳「もう何も言うな日坂」ポンポン


照彦「心理学部2回 東雲 円香 。俺らじゃ喋れたとしても授業のワークくらいしかねぇよ。いろんな奴が狙ってるってウワサだしなー」ハナホジホジ


青柳「食堂の安そうな椅子に腰掛けて、本を読んでてさえ端麗だな」


照彦「やめろやー、食堂の椅子ごときで円香ちゃんの商品価値は下がらねぇんだよ!」


翔真「…………」



円香「…………」ペラッ..



ゴスっ!

翔真「フゴォッ」ブフォ


照彦「いつまで見惚れてんだよ、行くぞオラ!」




そう、穏便に、普通に過ごそうと決めた…



ハズだった。


この夏が始まるまではーー。



ピピピピ...ピピピピ...


ピッー。


円香「…………」

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