第88話 燃える尻

「うわあああ! やめろおおお!」

「ふふふ、いくら叫んでも無駄ですよ」


 俺は六魔将軍、エンドラと相打ちになり、再び死んでしまった。


 相打ち、といえば聞こえはいいが、エンドラの野郎が巨大なオノを振り下ろしたせいで、足場が崩壊して、二人ともマグマに落ちて死んだんだけどな。


 なんともなさけない死に方だった。


 しかし、死は死だ。


 死んでこの真っ白な空間に来た俺は、生き返る為に、神様に尻を撫でられていた。


 何を今さら叫んでいるんだって?


 今回の神様は、ヒゲのおっさんの姿をしている。


 俺の尻を撫でるその手は、ゴツゴツしていて気持ち悪い。


 そしてさらにこのクソ神様、俺のうなじの辺りにヒゲをジョリジョリと当ててきやがる。


 これがとんでもなく気持ち悪いのだ。


「やめろ! ヒゲ! ヒゲが当たってるから!」

「当ててるんですよ」


 女の子が背中に胸を当ててるみたいに言うんじゃねえ!



 真っ白な空間に、3分間、俺の悲鳴が響き渡った。



「それでは素晴らしき尻魔道士よ、そなたに もう一度、機会を与えよう!」


 俺の目の前が光り輝き、俺は再び生き返る。



「……」


 首筋の、ヒゲの感触が消えない。


 俺はマイルームの自室で呆然としていた。



 しばらくすると、コルットが俺を呼びに来た。


 コルットの元気な姿を見て、俺は少し気が楽になった。


 こういう時、コルットは俺の元気の源になってくれる。


「ありがとう、コルット」

「?」


 コルットはよくわからない、といった顔をしていたが、俺が頭を撫でてやるとうれしそうに笑った。


 俺は気を取り直し、朝食と意思表明を済ませた後、ササゲ火山に向かう。


 その途中で、ランラン丸が前回の記憶を取り戻す。


「……り、リクト殿、また死んだのでござるか」

「おう、思い出したか」


 ランラン丸が前回の記憶を取り戻したみたいだ。


「うわぁ、なんでござるかこれ、敵と心中といえば聞こえはいいでござるが、敵のうっかりに巻き込まれて死んだだけじゃないでござるか」


 ランラン丸の言う通り、なんとも残念な死に様だった。


「あ……リクト殿、拙者ひとつ思ったのでござるが」

「ん? なんだ」


 ランラン丸が遠慮がちに聞いてくる。


「リクト殿、確かウミキタ王国の戦いで、飛べる様になったのでござるよね? なんで飛ばないのでござる?」

「……あ」


 忘れてた。


 そうだ、俺、飛べるんだった。


「1回目の足を滑らせて落ちた時に言えよ!」

「ええ? 拙者のせいでござるか?」


 そうだよ、俺飛べるんじゃん。足滑らせて落ちる時も、敵が足場を壊した時も、飛べば助かってたじゃないか。


「何やってるんだろうな、俺」

「う! せ、拙者もすぐに気づかなくてすまなかったでござる」


 落ち込む俺を見て、ランラン丸が気を使ってくれる。


 とにかく、これで今回の火山は何とかなりそうだ。



 俺達はササゲ火山に向かい、慎重に頂上の中央にある、文字が刻まれた大きな岩までたどり着く。


「ユミーリア、すぐに岩に触れてくれ」

「え? うん」


 ユミーリアが岩に触れる、それを邪魔するかの様に、後ろから敵の声が聞こえてくる。


「ちょっと待ってもらおうか?」


 後ろから聞こえてくるのは、六魔将軍のひとり、エンドラの野太い声だ。


「え?」

「気にするなユミーリア。みんなも聞こえないフリをしていい。ユミーリアは早く岩に触ってくれ」


 みんなが俺を見る。


 マキはエンドラを一度見て驚いていたが、俺の意図がわからないのか、どうするべきか困惑している様だった。


「リクトがそう言うなら」


 ユミーリアは一度その手を止めるが、俺の言葉に従い、岩に触れる。


 ユミーリアが岩に触れた瞬間、岩に刻まれた文字が光りだす。


「おい! 待てと言っただろう! 俺を無視するな!」


 エンドラが後ろで叫んでいる。


 仕方なく、俺は後ろを見る。


 そこにはトラの顔をした大男、六魔将軍のひとり、エンドラが立っていた。


「エンドラ、少し黙っていてくれないか」

「貴様、なぜ我の名を!?」


 エンドラがその名を呼ばれて驚いていた。


「お前が六魔将軍だってのは知ってるし、魔界に穴が出来たのも、お前が通ったらまた穴が小さくなってしまったのも、暑い空間を求めてここに偶然きたのも知ってるから、ちょっと黙っててくれよな」


 エンドラが俺の言葉を聞いて、さらに混乱する。


「貴様……いや、なぜ? 我はお前の事など知らぬというのに、なんなんだ、貴様は!?」


 俺の言葉には、マキやエリシリアも驚いていた。


「リクト様、あなたは……」


 マキが何か言おうとするが、その瞬間、岩からあふれた光が、俺とユミーリアを包み込んだ。


「きゃっ!」

「うお!?」


 俺とユミーリアが、突然の事に驚く。


 光は白いよろいとなり、ユミーリアに装着される。


「すごい、これが伝説の勇者のよろい?」


 ユミーリアのその姿は、まさに勇者そのものだった。

 ユミーリア、マジカッコイイ。


 で、俺の方の光はというと……


 俺の尻に、集まっていた。


 予想していたとはいえ、なぜこうも尻なのか。


「な、なんだ貴様、そのよろいは!」


 エンドラがユミーリアの、白く輝くよろいを見て驚く。


「そして貴様! 貴様は、なんだそれは! なぜ尻を光らせている!?」


 そんな事は俺が知りたいわ!


 俺を指差すエンドラに、心の中で突っ込みをいれる。


 俺が無表情で尻の光を見つめていると、その光はやがて形を変え、炎となった。


「ぬおっ!?」


 俺の尻が激しく燃え盛る。


「リクト!」


 ユミーリアが心配そうにこちらを見る。


「大丈夫なのか、リクト」


 エリシリアも突然の事にあせっている。


「熱くないですか、リクト様」


 マキは、手に魔力を集中している。俺が熱いようであれば、すぐに魔法で火を消すつもりなのだろう。



 しかし、俺の尻の炎は、熱くはなかった。


「だ、大丈夫だ。驚いたが熱くはない」


 俺の尻の炎は、激しく燃えていた。


 俺は炎を動かしたり、敵に向かって飛んでいけと念じてみるが、炎は燃えているだけで、動かない。


 激しく燃え盛る、俺の尻の炎。


「……おい」


 我慢できなくなったのか、敵のエンドラがこちらに話しかけてくる。


「その、なんだ、その炎はなんだ? 何がどうなるというのだ?」


 それは俺にもわからない。


 燃えたからなんだというのだろう?


 俺の尻の炎はただ燃えるだけで、特に何も起こらなかった。


「まさか、ただ燃えているだけなのか? 貴様のその、尻の炎は」


 俺はエンドラに向かって、ニヤリと笑う。


「さあな」


 尻が燃えるだけで何も起こらない。俺もわけがわからなかったが、とりあえず笑ってみた。


 エンドラはそんな俺の態度に困惑していた。


 だが、覚悟を決めたのか、その表情をひきしめた。


「まあよい、何であれ、我はここで姫様を殺すだけだ。姫様さえ死ねば、我ら魔界にとっての脅威はなくなったも同然だからな」


 エンドラが手に持つ巨大なオノを構える。


「おいおい、いいのか? 俺の尻が火を噴くぜ?」

「我にとって炎は心地よいものだ。考えてみればその炎がこちらに襲い掛かってこようが、我には通じぬぞ!」


 マジか。

 あれか、RPGではよくある、炎系のモンスターに炎の魔法で攻撃すると、逆に回復させてしまうパターンか?


「いくぞ! 姫様、覚悟はよろしいですかな?」

「くっ!」


 マキがスカートから巨大なハンマーを取り出す。


 しかし、マキのレベルが足りない為、攻撃がきかないのは前回で判明している。


「やめておけマキ、今のマキじゃレベルが足りないってのは、わかってるだろう?」

「リクト様、しかし!」


 俺は右手を広げて、マキを制止する。


「俺に任せておけ、作戦がある」


 俺はひとり、前に出る。


 今のユミーリアなら攻撃が通じるかもしれない。だが、勇者の剣でなければ攻撃が通じない可能性もある。

 こんな危険な場所で試す必要は無い。


 俺に何か力が宿るかと期待したが、ただ尻が燃えただけだ。これも意味が無い。


 ならば最後の手段。


 敵に自ら足場を壊してもらうだけだ。


 ヤツはマグマに落ちるが、俺は飛べる。これで終わりだ。


「いくぞ! エンドラ!」


 俺はエンドラに向かって駆け出し、ランラン丸で攻撃する。


「ぐおっ!?」


 エンドラは、俺の攻撃はきかないと思っていたのだろう。


 俺もそう思っていた。


 だが、俺の一撃は、敵の魔法障壁を斬り裂き、エンドラにダメージを与えた。


「ば、馬鹿な! なぜ我の障壁が!?」


 俺もその結果には驚いていた。


 もしかして、尻に炎が宿ったおかげ、なのか?


 相変わらず俺の尻の炎は、激しく燃えている。


「き、貴様、我の事を知り、我の魔法障壁を斬り裂くとは、何者なのだ?」


 エンドラがこちらを見てうろたえている。


 これ、もしかして普通に勝てるんじゃないか?


 俺は再度ランラン丸をふるい、敵を横なぎに斬り裂く。


「ぐあっ!」


 俺の刀は敵のよろいを斬り裂き、そこから敵の紫色の血が噴き出した。


「ぐおお! お、おのれ!」


 敵が斬られた部分をおさえ、ヒザをつく。


「すごい、すごいよリクト!」


 新しい白いよろいを着たユミーリアが、驚いていた。


「よし、私も続くぞ!」


 前に出てエリシリアが光のムチで敵を攻撃する。


 しかし、そのムチは敵の魔力障壁にはじかれる。


「なに!?」

「やはり、魔力障壁がなくなったわけではないようですね」


 エリシリアが驚き、マキが冷静に分析する。


「エリシリア様、おそらくリクト様は、先ほどの光で勇者の力を得たのだと思われます。敵の魔力障壁を突破できるのは、リクト様と、ユミーリア様だけの様です」


 エリシリアとマキが、ユミーリアを見る。


「わたしは?」


 コルットが手をあげる。


「コルット様の攻撃も、おそらく通用しないでしょう」

「えー」


 コルットがションボリしていた。


「やってみる!」


 コルットがエンドラに向かって駆け出す。


 そのスピードは、俺達の中で一番速い。


 あっという間にエンドラとの距離を詰め、勢い良く蹴りを放つ。


「ぐおっ!?」


 エンドラはコルットのスピードを追いきれず、突然目の前に現れたケモ耳幼女の蹴りに驚いていた。


 残念ながら、コルットの蹴りは魔力障壁に弾かれる。


「ほんとだ、何か壁みたいなのがある」


 やはりコルットの攻撃は通用しないみたいだ。


「お、驚かせおって!」


 エンドラが再び立ち上がる。


「コルット、後ろに下がってろ。こいつは俺が倒す」


 コルットは残念そうな顔をしたが、大人しく後ろに下がる。


 あとでまた頭を撫でてやらないとな。


 俺はそう思いながら、ランラン丸を構える。


「貴様が何者かは知らんが、貴様を放っておけば我らの脅威となりかねない事はわかった。悪いがここで死んでもらうぞ!」


 エンドラがオノを大きく振りかぶる。


 そのオノが、俺に向かって思いっきり振り下ろされる。


 俺はその攻撃を後ろに飛んでかわす。


 当然、その攻撃は地面に当たり、足場が崩壊する。


「ぐおお!?」


 エンドラが崩壊する足場に飲まれ、マグマに向かって落ちる。


「し、しまったあああ!」


 うん、やっぱりこいつ、馬鹿だな。


 俺は敵と同じ様にマグマに向かって落ちる。


「リクト!」

「リクト様!」


 みんなの心配そうな顔が見えた。


 心配ない。俺は飛べるからな。


「き、貴様! まさかこれを狙って? おのれ、我と相打ち覚悟だったか!」


 俺はそんなエンドラの言葉に、ニヤリと笑う。


「悪いな、相打ちじゃないんだ」

「なに?」


 俺は尻に力を集中する。


「天使のケツ!」


 俺の尻から、ピンク色の光の翼が生える。


 どうでもいいが、嫌だなこの名前。名前変えられないのかな。


 俺は尻から出た翼をはばたかせ、ひとり落ちていくエンドラを見つめる。


「そ、そんな! おのれ! 我がこんな事で! おのれえええ!」


 そりゃあ、自分の攻撃で足場がくずれて、そのまま落ちて死にましたって、悔しいよな。


 俺も悔しくて、情けなかったよ。


「くそおお! ちくしょおお! ちくしょおおお!」


 エンドラは叫びながら、マグマに沈んでいった。


 終わった。


 俺はエンドラの最後を見届けて、上にあがろうとした。


 その時、下で何か音がした。


「ん?」


 見ると、エンドラが沈んだ部分のマグマがわきだっている。


「ぐおおお!」


 マグマをまとったエンドラが、こちらへ飛び上がってきた。


「げえっ!?」


 俺はあまりの予想外の事態に、動けなかった。


 エンドラが、俺の足を掴む。


「熱っ!」

「ぐおおお! 我は死なぬ! 死んでなるものかあああ!」


 エンドラの身体はどんどん溶けていっていた。


 恐らく最後の力で、俺を引きずり込むつもりなのだろう。



「リクトー!」



 上から声がした。


 ふと見ると、ユミーリアがこちらに飛び込んできた。


「え?」

「なに!?」


 俺とエンドラが驚愕する。


「たあああ!」


 落ちてくるユミーリアが、予備に持っていた鉄の剣を、俺にしがみつくエンドラに突き刺した。


「があああ!」


 エンドラは再び、マグマに落ちていった。


 俺は落ちてきたユミーリアの腕を掴み、持ち上げて抱きかかえる。


「あ、危ないだろうユミーリア!」


 ユミーリアは飛べない。

 なのにマグマに向かって飛び込むなんて、自殺行為だ。


「えへへ、リクトがピンチだって思ったらつい……それに、多分リクトが受け止めてくれるかなって」


 ユミーリアの照れ笑いに、俺は激しくときめいた。


 そんな事を言われたら、俺はもう、何も言えない。


 むしろ可愛いしか言えない。

 俺から可愛い以外の言葉を奪う美少女、それがユミーリアだった。


 俺はユミーリアを抱きかかえ、尻の翼を羽ばたかせ、上に居るみんなのもとへ戻る。


 途中、掴まれてヤケドしたと思われる足を、ゴッドヒールで治しておいた。


「リクト、ユミーリア! 大丈夫か!?」


 エリシリアが青い顔をして、こちらに駆け寄ってくる。


「馬鹿者! 二人とも、無茶をして……心臓が二度止まったぞ!」


 エリシリアが俺達を抱きしめる。


 ちょっと涙目になっていた。


「わ、悪い、先に説明しておけば良かったな」

「まったくだ! お前が敵と一緒に落ちた時は、私は……私は!」


 エリシリアの目から、どんどん涙があふれてきた。


「ご、ごめん」


 俺はエリシリアの頭を撫でる。


「ユミーリア、お前もだ! 私はお前の事を、家族だと思っているのに、なのに! この馬鹿者が!」


 涙があふれるのが止まらないエリシリアを見て、ユミーリアもシュンとなる。


「ご、ごめんなさい」


「馬鹿者! 馬鹿者!」


 エリシリアが俺の胸に顔をうずめてポカポカと叩いてくる。


 俺とユミーリアはお互いを見て、苦笑した。


「リクト様、ユミーリア様。さすがの私も今回の事は、笑って許す事は出来ませんよ?」


 マキも怒っていた。


「まあ、これを見て、猛省してください」


 マキはそう言って、コルットを前に出す。


「グスッ、おにーちゃん、ゆみおねーちゃん、しんじゃ、やだぁ」


 メチャクチャ泣いていた。


 俺とユミーリアは、大慌てでコルットを慰めた。



「さて、伝説の勇者の装備も手に入れましたし、方法はどうあれ、六魔将軍のひとりを倒したのは最高の結果と言えるでしょう。とはいえ長居は不要です。街に戻りましょう」


 マキが頭を下げながら俺に告げる。


「そうだな……ってそうだ、そういえばあいつ、道を壊してしまったんだよな。どうやって帰ろうか?」


 帰る為の唯一の道は、エンドラが攻撃して壊してしまった。


 どうする? 俺が飛んでみんなを抱えて戻るか?


「リクト様、マイホームは出せませんか? ここで出せるのであれば、それですぐに帰れるのではないでしょうか」


「……あ」


 忘れてた。


 なんかあれだな、大長編になると自分が持ってる道具を忘れてしまう気持ちがちょっとわかった。

 いざ危機になったりあわててしまうと、意外と自分の手札を忘れてしまうもんだ。


 こういう時、冷静に突っ込んでくれる仲間が居るのはありがたいな。


「マイホーム」


 俺の尻の炎が消えて、代わりに尻からピンク色の光があふれ、尻の間からニュッと扉が出てくる。


 俺達はマイホームに入り、一息つく。



「いやぁ、マキ殿の魔法があるとはいえ、炎に囲まれていると暑苦しく感じるでござるからなー。こうしてマイホームに戻ってくると、ホッとするでござるよ」


 人の姿になったランラン丸が、早速ソファに転がる。


「グスッ」

「ううっ」


 一方、エリシリアとコルットはまだ泣いていた。


 俺とユミーリアはバツが悪くなり、目を泳がせる。


 マキは俺達をジト目で見ている。


「ご、ごめんな?」


 俺はエリシリアとコルットに謝る。


「……別に、私はもう、気にしていない」


 エリシリアは涙目でプクっと頬をふくらませる。なんか可愛い。


「おにーちゃん」


 コルットは俺に抱きついてくる。


 俺はコルットを抱っこして、頭を撫でる。


「ごめんな、コルット」

「……うん」


 コルットは大丈夫そうだ。


 エリシリアを見ると、俺がコルットを抱っこしたのを見て、さらに頬をふくらませていた。

 こっちの機嫌が直るのには、時間がかかりそうだった。



「……ん? げ、もしかして」


 コルットを抱っこしていた俺は、ある違和感に気づく。


「コルット、ちょっとゴメンな?」


 俺はコルットをおろす。


「おにーちゃん?」

「ゴメン、ちょっと確認しなきゃいけない事があるんだ」


 俺は急いで階段に向かう。


「リクト様?」


 マキがすれ違い様に声をかけてくる。


「悪い、すぐに戻る」


 俺は階段を上がり、2階に行く。


 そして自分の部屋に入る。


「か、鏡! 鏡が欲しい!」


 俺がそう叫ぶと、部屋に等身大の鏡が現れる。

 マイホームマジ便利。


 俺は鏡に向かって後ろを向き、ピンク色のコートを持ち上げる。


 するとそこには……


「や、やっぱりか、ちくしょう」


 そこにうつっていたのは、俺の生尻だった。


 どうもスースーすると思ったら、炎でズボンが焼けてしまったらしい。

 なんてこった。


 俺はズボンを履きかえる。


「あの炎、また出てくるのか? 毎回こうなるのかよ……はぁ、どうしたもんか」



 俺は尻の部分に穴があいたズボンを見つめて、深いため息をついた。



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