第63話 ロイヤルナイツのサービス
城に戻った俺達は、みんなにシズカの事を説明した。
だが、もちろんそれで終わりとはいかなかった。
いくら弟の為とはいえ、邪神側に情報を流していたのだ。
それも、連絡員に情報を渡していただけで、邪神側の事は何も知らされていなかった。
一方的にこちらの情報を抜かれただけだった。
「しかもその上、脱獄とは! これは問題ですぞ、厳しい処分が必要と思われます」
そう王様に進言しているのは、ムノーダだった。
王様も今度ばかりはどうしたものかと、ひげを撫でている。
「ねえリクト、なんとかならないの?」
ユミーリアがコッソリ話しかけてきた。
確かに、シズカがやった事はスパイ行為だ。その事実がなくなるわけじゃない。
だが、気になる事もある。
「王様、ひとついいでしょうか」
俺は前に出て、手をあげる。
「なんだ、尻魔道士よ」
ムノーダが俺をにらんでいた。
ほんとにこいつ、いちいち突っかかってくるな、実はモンスターだったりするんじゃないか?
「シズカの弟の事ですが、ひとつ報告がございます」
「なんだ? 申してみよ」
俺は本来のストーリーとの違い、つまり、シズカの弟が病気になった事に疑問を持っていた。
本来のストーリーではシズカの弟が病気になるなんて話は無かった。
では、なぜこの世界ではそんな事が起きたのか。
それは多分、ロイヤルナイツであるシズカに、情報を漏らさせる為だろう。
だとすれば……あのシズカの弟の病気は、意図的だったんじゃないかと思う。
「……シズカの弟の病気を治した時、邪神の力を感じました。おそらく邪神側は、邪神の力でシズカの弟を病気にして、それを邪神の力で治すと嘘をついて、シズカを利用したと思われます」
俺はそう言って、チラッと大臣を見る。
実は邪神の使徒である、大臣の顔がゆがんでいた。どうやら正解みたいだ。
「シズカ、弟が病気になったあと、割とすぐに邪神の使徒が接触してきたんじゃないか?」
俺はうつむいていたシズカに話しかける。
「え、ええ……そう言われてみれば、そうだったと思います」
やっぱりな。
「邪神の使徒が早々にシズカに接触してきたのは、シズカの弟が病気になると知っていたからです。つまり、邪神の力で病気にして、邪神の力で治してやろうと、シズカを騙していたのです」
まあ、マッチポンプ、自作自演だったってわけだな。
「シズカがまったく悪くなかったとは言いませんが、敵はシズカの一番大事な、ゆずれないものを人質にとっていたのです。ある意味、シズカは被害者だったのです。全てを許してとは言いませんが、少しは罪を軽くしてあげても良いと思います」
俺はそう言って、王様に頭を下げた。
「ふむ、なるほどな。ある意味被害者か」
王様が俺とシズカを交互に見て、考えている。
大臣はすでに無表情に戻っていた。
かわりにムノーダが、ぐぬぬとくやしそうな顔をしている。
あのムノーダはなんだ? エリシリアを敵に差し出そうと提案したり、シズカの事といい、この国の戦力を削りたいんだろうか?
ひょっとして、帝国側の敵なんじゃないか? それとも邪神側の……実は本当にモンスターだったりして。
「よし! シズカよ、これより2日間、謹慎処分とする! そして今後は二度と裏切りは許さん! 何か困った事があれば必ず周囲を頼れ! その上で、我が国に最大限、貢献するがよい!」
「……はっ! ありがとうございます! これからも誠心誠意、尽くします!」
シズカが涙を流しながら、深々と頭を下げた。
話がわかる王様で良かった。
その後俺は、城の兵士達に感謝された。
みんなシズカが本気で邪神の使徒になったとは思ってなかったみたいだ。
「あ! いたいた、エリシリアー!」
エリシリアに声をかけてきたのは、ロイヤルナイツのひとり、みんなのお姉ちゃん役のフレイラだった。
「フレイラか、どうした?」
「うふふ、今日は本当にお疲れ様。シズカちゃんが牢屋に閉じ込められた時はどうしようかと思ったけど、その日の内に解決してくれて良かったわー」
フレイラがおっとりと笑顔で話す。
そうか、そういえばまだ1日経ってなかったんだな。
会議、シズカの事情判明、ジャミリーとの戦いと事件が続いたから、会議をしたのが3日くらい前に感じた。
「ねえエリシリア、がんばってくれたそこのリクト君に、私達でお礼をしようと思うんだけど、どうかしら?」
……ん?
ちょ、ちょっと待て、今のセリフは、もしかして!?
「お礼?」
「そうよー。私達ロイヤルナイツみんなで、お・れ・いというか、サービスしようと思うの」
やっぱりそうだ!
これは、サンダーの紋章5であったイベントだ!
「い、いや、そんなに気を使わなくてもいいぞ?」
あせるな、あせるんじゃない、俺。
ここは慎重に、ゲームのセリフ通りに話すんだ。
その先には……あのイベントが待っているはず!
「いえいえ、遠慮なく私達のサービスを受けてくださいな。それでは、こちらへどうぞー」
俺はフレイラに案内される。
そう。
お城の浴場へ!
これはいわゆる、サービスイベントだ。
ロイヤルナイツ全員で、日頃のお礼と称して、お風呂で俺にサービスしてくれるのだ。
もちろん、水着でだけど。
しかし、まさかこのイベントが実際に体験できるとは思わなかった。
ふふ、ふふふふふ。
俺はフレイラにうながされ、水着を着用して先に風呂に入る。
なんだろうなー?
これから何が起きるのかわからないなー。
そうして待っていると、浴場のドアが開く。
そこには、水着を着た美少女が7人、立っていた。
「お待たせしましたー。ロイヤルナイツ、参上です」
フレイラの豊かなボディがまぶしくゆれた。白の水着がまた似合っている。最高にエロい。
「リクトさん、この度は本当に、ありがとうございました」
標準ボディのシズカが頭を下げる。
布の面積が大きい水着だったが、普段着よりはよっぽど肌色の面積が増えている。まぶしいぜ。
「まったく、なんで私まで……」
レズリーは起伏の無い身体だったが、あのツンツンしていた娘が水着で俺の前に出ているのだと思うと、なんだかそれだけでちょっと良い。
「この水着、可愛いでしょー」
ロイヤルナイツの元気なロリっ子、エールだ。水着はスク水だった。なぜこの世界にスク水があるのかはどうでもいい。水着イベントとはそういうものだ。
「り、リクト……その、なんだ、どうかな?」
エリシリアは黒のビキニだった。色々はみ出ている。危ない、これは危ない。この中で一番巨大なモノを持つエリシリアは本当に危ない。
しかもちょっと照れているのがこれまたすごい破壊力だった。
ロイヤルナイツが水着で勢ぞろい。圧巻だった。
すでに俺は、お湯の中から出られなくなっていた。
だが、それだけでは終わらなかった。
「おにーちゃん、見て見てー、フリフリー」
コルットがピンク色のフリフリの水着を着て、ケモ耳をピコピコ動かしてよろこんでいる。
プールに遊びに来た幼女だな。うん、可愛い。
そして最終兵器。
「ううっ、あ、あんまり見ないでね? リクト」
赤いビキニを着た、勇者ユミーリアがそこに居た。
まさか、この目でユミーリアの水着姿を拝める日が来るなんて。
ゲームでは決して見られなかった、ユミーリアの水着姿。
普段は服の中に隠されている、実は豊満なそのボディ!
俺は神に感謝した。
ああ、最高だ。
やっぱりこのゲームの世界は、最高だ!
「それじゃあ、みんなで入りましょうかー。あ、リクトさん? おさわりは無しですよ?」
フレイラがウインクする。
ああもちろんだ。おさわりなどしてこの宴を終わらせてたまるものか!
だが、当たってしまうものは仕方ないよな?
俺は一生分のメモリーを、今日ここで使う事を決意した。
この美少女達の生の水着姿を、決して忘れるものか。
「おにーちゃん、さっきからどうして前かがみなの?」
「……コルット、大人にはな、大人の事情があるんだ」
フレイラ辺りは気づいている様で、ずっとこちらを見て、笑っていた。
その後、俺は背中を流してもらったり、水着の美少女達を堪能した。
「こ、こらリクト! どこを触っている!?」
エリシリアが色々はみ出して大変な事になったり。
「リクト、これでいいかな?」
背中にユミーリアのやらわかさを感じたり。
「わーい! おにーちゃん号だー!」
「こらリクト、コルット! お風呂で泳ぐんじゃない!」
コルット専用の船になったりした。
最高の時間だった。
「うー、恥ずかしかったよぉ」
夜の帰り道、ユミーリアがずっと真っ赤になっていた。
「なら、断っても良かったんだぞ?」
「だって、私だってリクトにサービスしたかったし」
ああ、幸せだなぁ。
俺の人生で最高の嫁が二人、前を歩いている。
そして可愛いコルットは俺の腕の中で眠っている。
こんな日々が、ずっと続いていけば良いのにな。
そう思った。
「おう、お帰りリクト」
宿屋に着くと、コルットの親父さんが迎えてくれた。
「ただいま」
「なんでえ、コルットはまたおねむか。まあ今日はちょっと遅いし、しょうがないか」
俺からコルットを受け取ろうとする親父さん。
しかし、その受け渡しの際、コルットが起きてしまった。
「うにゅ? おとーさん?」
「おう、起こしちまったか、ごめんなコルット」
親父さんに抱っこされるコルット。
「んー、オフロはー?」
「風呂? 風呂に入るのか?」
風呂……?
なんだろう、なんだか嫌な予感がする。
「おにーちゃんとオフロー」
ピシッと一瞬空気が凍った気がした。
「はは、コルット。いくらなんでもおにーちゃんとお風呂は駄目だぞ? お前も女の子なんだからな」
「んー? おにーちゃんとオフロ、楽しかったよー?」
寝ぼけながらコルットがつぶやいた。
そして、空気はさらに凍る事になる。
「コルット、おめえ、リクトと一緒に風呂に入ったのか?」
「うん、たのしかったよー、おにーちゃんは大人の事情で前かがみで、わたしが上に乗ったのー」
それが決定打だった。
親父さんの闘気がふくれあがったのを感じた俺は、急いで逃げ出した。
「マテリクト、ドウイウコトダ?」
だが、逃げられなかった。
親父さんが素早く俺の肩を掴んだのだ。
「え、えっと」
俺は必死に言い訳を考える。
いや、そもそもやましい事は無い。ない……なくは、ない。
「リクト、俺の人生最後の敵が決まったぜ」
親父さんの青い闘気が、俺を包み込む。
「コルットは、コルットはわたさああああああああん!!」
親父さんの闘気が、爆発した。
「え?」
気がつくと俺は、真っ白な空間に居た。
そこでは、男勇者の姿をした神様が、ポテチを食べながら漫画を読んでいた。
「は? あの、何してるんですアナタ?」
俺に気づいた神様が、めずらしく驚いていた。
どうやら俺がここに来る事が、完全に予想外だったらしい。
「え? あれ? あの後、死ぬ要素とかありましたっけ? なんでここにいるんですか?」
それは俺が聞きたい。
いや、俺には心当たりがあるか。
「ちょっと待ってくださいね。今巻き戻しますから」
神様が何か機械を操作している。
そして機械から出た映像を見て、爆笑した。
「あはははは! リュウガに殺されるとか、完全に予想外ですよ! いやーおもしろい! あはははは!」
やっぱり、俺はあの親父さんの一撃で死んだのか。全然現役でいけるじゃないか、親父さん。
神様はひとしきり笑った後、ため息をついた。
「はぁ、何やってるんですかアナタ」
ほんとにな。
自分の予想外の死に、俺も神様と一緒にため息をついた。
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