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六堂杳南

第1話 凍える夢


ひどく熱かったことは覚えている。

炎に舐められた手足は、鼓動のたびにまるで殴られるように痛んだ。


それから衝撃。

いくつも何かが胸や腹に食い込んでくる。

衝撃で息を吐きだし、身体は酸素を求めて空気を吸って、咽喉が焼かれた。

息ができない。手足が動かない。どんどん寒くなってくる。


すうっと、全てが遠ざかる。


耳障りな音が聞こえてくるまで、眠っていたようだった。

何の音かわからない、かすれてざらついた音が繰り返し聞こえる。

瞼を開けるのも億劫だった。

瞼の裏でいくつかの光がちかちかと散る。白い光、緑色の横線、数字……。


【再起動完了】


なんだろう、これは。開かない瞼の裏に現れた、ぼんやりと穏やかな緑の文字。

ああ、そうだ。新しく入れたソフトだろう。ボディメンテナンスだか何だか。

最新のセンサーリンクについてきたやつだ。


【身体機能、危険水準まで低下中。以下の障害が疑われます。最優先で状況の改善が必要です。呼吸障害、血圧低下、血液損失】


なんだ、何を言っているんだ。おれの身体が呼吸障害で、血圧が下がって、血が?

濁った音がすぐ近くで聞こえる。寒くてなかなか身体が動かない。

なんとか瞼を持ちあげる。

その時気がついた。

耳障りなざらついたあの音が、自分の呼吸音なのだと。

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