妖怪ささくれさん

 ささくれは妖怪ささくれさんが植えています。きっとペンギンの2倍くらいで親指の形をした物体が滑るように道を進んでいくところを見たことがあるでしょう。それが妖怪ささくれさんです。妖怪ささくれさんは人々が寝ている間にささくれを親指にプレゼントしています。サンタさんみたいに。細い腕で自分のささくれをプチッと抜いて、にゃちゃっとプレゼントしています。


 ある日、妖怪ささくれさんがいつものようにささくれを配りに出かけるとちょうどバスがやってきました。

 プップップー!!

 妖怪ささくれさんはバスに乗ろうと思いました。前々から乗りたかったのです。

 ボボボボボボボボー!!

 底面からジェットを噴射し妖怪ささくれさんは浮遊。バスに乗ろうと頑張ります。

 ボボボボボボボボー!!

 しかし、

「あ、あのう、親指の方は乗車しないようお願い致します。」

 乗っている人間たちからも厳しい目が向けられ、妖怪ささくれさんはバスを降りました。

 妖怪ささくれさんは親指差別だとキレました。この声は世界中の親指たちに響きました。親指たちは立ち上がりました。ストライキです。

「ビビビビビーン!!」

 親指達は人間の手から離れました。みんなで森へ行き、暮らし始めました。お腹が空くと何匹かを犠牲にしてバーベキューをしました。共食いしました。小さい親指から食べられていきました。


 人間たちは困りました。

「これじゃあボールが投げれない。」

 プロ野球選手がいいます。

「ピアノが弾けません。」

 ミュージシャンたちもいいます。

「しかし、バスに巨大な親指を乗せてもいいのだろうか?別に親指無しで生きている人だってたくさん現にいるのだから。腕がない人だって、足がない人だって、生きている。」

「確かに。」

「そもそもあいつはなんなんだ。妖怪ささくれさん?ささくれこそいらないぜ。」

 権力者たちは話し合い、親指が必要ないライフスタイルを作って行く方向に進めることにしました。


 その後、妖怪ささくれさんは、よく見ると可愛いので人気になりました。人々は今は亡き親指の形見のようにささくれさんを見ました。

「妖怪に、なんかようかい?」と言って歩き、チップをたくさんもらいました。親指たちは山で滅んでいました。


 完

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