致命的なミス

 致命的な仕事のミスをしていると、上司が話しかけてきました。


「佐々木くん。最近仕事の調子はどうですか?」


「はい。今は致命的なミスをしています。」


「へえ。そうですか。」


 上司はそういって頷くと、自分の机に戻っていきました。


 致命的なミスは致命的なミスなので致命的でした。会社が倒産しそうです。


「会社が倒産しそうです。」


 上司に連絡しました。


「へえ。そうですか。」


 上司はびくともしませんでした。上司はお相撲さんだからです。上司はお相撲さんなのでびくともしませんでした。


 ドーンッ!!


 サーバールームが爆発しました。私がミスして灯油を撒いて火をつけたためです。


 ピピピピーッ!!


 顧客のデータが抜かれました。私が間違えてパスワードをハッカーに教えてしまったためです。


 そんなことよりも火の海です。フロアのみんなは急いで非常口から逃げました。上司もどすこいどすこい逃げました。


 みんなで外に出て燃え盛るビルを眺めました。


「こりゃ倒産だな。」


「倒産だ倒産だ。」


「これからどうすればいいのだろうか。」


「どすこい。どすこい。」


「ああ大変だ大変だ。」


「おしまいだおしまいだ。」


「もう無理だもう無理だ。」


「どすこい。どすこい。」


 皆が絶望している中、相撲取りの上司は張り手をしています。今にも倒れそうな会社を支えようと必死に頑張っているのです。


 完

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