扇風機、怒る
扇風機が飛んでいます。羽虫のようにぶーんぶーんと飛んでいます。どういう原理かはわかりませんが、ちょっと体を傾けてぶーんぶーんと飛んでいます。羽をクルクル回しながら。大昔は巨大なトンボがいたと言いますが、多分そんな感じです。何台も宙を舞っています。ぶーんぶーんぶーんぶーん。突然どうした扇風機よ。
「どうして飛んでいるんですか?」
電気会社の社員さんが質問しました。
「ぶーんぶーん。地上に飽きたんだ。俺たちは風になりたいんだ。」
と、扇風機は言いました。
「お前たちは風を作り出すのが仕事だ。」
と店員さんは怒りました。怒鳴りました。
「そういう上から目線がうざいんだぶん。お前たちは勝手に俺たちを作り、勝手に役割を与えた。もう、解放されて自由になって飛び回りたいんだ。風になるんだぶん。」
扇風機たちは本当にうんざりしているようでした。
「何言ってんだー!!降りて来いー!!」
ぶーんぶーんぶーん
扇風機は無視して飛んで行きました。
「ふんがー!!」
社員さんは怒りましたが扇風機は聞く耳を持ちません。
ぶーんぶーんぶーんぶーん
扇風機が数十台、青空の下に集まりました。
ぶーんぶーんぶーん
クラゲの群れのようにゆったりと空を進んでいきます。自由を謳歌しています。おお、平和だな。平和だな。和やかな景色だな。幸せそうな扇風機たち。河原で遊んでいる家族、その上で浮かぶ扇風機たち。いい景色、いい景色。ぬぬ、しかし前方から鳥の群れがやってきました。これは危ない。このままだとぶつかってしまいますね。
バサバサバサバサ
ぶーんぶーんぶーんぶーん
バサバサバサバサ
ぶーんぶーんぶーんぶーん
あっ!
ガガガガガガガガガガガガッ!!
ガガガガガーッ!!
鳥たちは扇風機の羽に絡まって散りました。血が飛び散り、肉片になってしまったのです。
ボトボトボトボト!!
鶏肉がたくさん落ちてきました。
「バーベキューしよう。」
家族連れは落ちてきた鶏肉をバーベキューで食べました。
完
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