蟻人間さん
窓の外に巨大な土の山みたいなものが、できている。あれはなんだ。まるでピラミッドだ。蜂の巣みたいでもあるし。20mくらいはあろう高さだ。二階建ての我が家を悠々と超えている。うーむ。なんだなんだ。なんだなんだ。なんなんだ。なんなんだ。なんなんだなんなんだ。
ピンポーン!!
おっと、日曜日の午前中から何者だろう。ドアを開けると、スーツを着た蟻が立っていた。蟻人間が立っていた。
「どうも。はじめまして。先日こちらに越してきました蟻人間のアリ男(ありお)です。ちょっと前住んでたところが開発されて、よろしくお願い致します。」
スーツを着て、170cmくらい。私と同じくらいの高さ。人間と体格は変わらないが顔が蟻だ。ああ、さっきのあれは蟻塚だったのか。蟻人間、こんな生物がいたんだなあ。しかし律儀に挨拶に来るなんて、お行儀の良い蟻人間だ。
「あ、どうもよろしく。」
「ありりりりー!!」
蟻人間蟻男は安心したようで去って行った。
蟻人間が近所に越してきても特に困ることはない。外を歩く時蟻人間をたくさん見るようになったくらいだ。子供の蟻人間がたくさんいる。うーん、可愛らしいなあ。うんうんうん。お、蟻男さんが散歩しているぞ。
「こんにちは蟻男さん。」
「あ、どうも。たかはしさん。」
「よく歩いてますね。歩くの好きなんですか?」
「ああ、歩くんじゃないです。ありくんです。蟻人間ですから。」
「きょ、、、、きょぺー!!」
こんな感じで日常を過ごしていたのだ。
一ヶ月が過ぎた頃、外を歩く蟻人間、なんだかゆっくりだ。それどころか杖をついている。見かける数も減っている気がする。ちょっと声をかけてみようかな。
「蟻人間さん。なんだか元気がありませんねえ。どうしたんですか?」
「ああ、高橋さん....。あの....あの....みっともないんですが...食べ物が無くて.....。」
「あがあ.....たいへんだー!!普段は何を食べているのです??」
「はい...人間の死体をですね...主食としていたのですが...なかなか手に入らずですね....。」
「きょー!!怖いですね!!前住んでた時はどこで見つけてたんですか??」
「はい....。前は紛争地の側に住んでいたので、そこから拾っていたんです....。ですがね....文明が発達してきて兵器が強力になり戦線も拡大してきたんですよ....。我々の身にも危険が及ぶようになってきてこちらに半ば避難のような形で越してきたのです....。」
「きょー!!きょー!!それは大変ですねー!!」
「はい。病院とか火葬場へ死体をもらいに行っても『それは大切なご遺体だー!!』て門前払いで....。このままでは餓死するか..一家心中するか....。山に行って動物の死骸を探してるのですが...なかなか見つかるものでもなく....。」
「ううむ....。ちょっと協力できることがないか...私も考えてみます...。」
「ありがとうございます.....。」
私を見る蟻男の口からは涎がだらだらと垂れていた。
しかしそんなことを言ってもどうしようもない。私はお風呂に入った。
ザバーンッ!!
いい湯だなーっ!!
次の日.....。
ピンポーン!!
なんだなんだ.....。日曜日の午前中に.....。
ドアを開けると髪の毛から爪先までレインボーカラー、パンチパーマの元気なおばさんが立っていた。
「こんにちはー!!私、今日からお隣に引っ越してきました。マフィアのマフィ子でーす!!よろしくー!!」
「は、はい...どうも....。」
なんなんだこんな時に...。迫力に気圧されながら私は思った。は、マフィアなら!!
「あの!!マフィアなら!!死体余ってませんか!!」
「あら、余ってるわよーん。毎日海に捨てに行くのが大変だわよーん。」
「その死体!!下さい!!」
こうして蟻人間の食料問題は解決した。最近は3人でよく飲みに行きます。
完
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます