卒業式
ああ、今日は卒業式。みんな涙しています。
「しくしくしくしく、しくしくしくしく。」
「しくしくしくしく、しくしくしくしく。」
泣き声で教室が埋まっています。みんな悲しいのですね。ああ、悲しいな、悲しいな。
「お前ら、お前ら泣いてんじゃねえっ!!」
担任の体育教師が声を張り上げます。元気がいいな。
「お前らの人生はここから始まるんだ。だから泣くんじゃねえ。泣くなっ、泣くなって、、、。」
そういう先生の目にも涙が、、、、、。
「泣くなっ、、泣くなっ、、、うおおおおおおお!!」
「はっはははは、先生、、ぐずっ、ぐずっ、、、先生こそ泣いてるじゃん。ぐずっ、ぐずっ、、、。」
「ははっ、、先生、、馬鹿だなっ、、馬鹿だなーっ、、。先生ーっ!!」
わーっ!!
生徒たちが一目散に教卓の方へかけてゆきます。
わーっ!!
「お、お前たちーっ!!」
先生がみんなを受け止めます。感動の場面です。
ボロンッ!!
何かが落ちました。んっ?なんだなんだ。みんな一斉にそっちを向きます。あ、あれは、なんだか白っぽい塊みたいな...。玉ねぎです。微塵切りにされた玉ねぎが落ちてきました。なんと先生はわざと涙を流すために玉ねぎを微塵切りにしていたのです。なんということでしょう。こんなことがあっていいのでしょうか?
「えっ、、、先生、、、、。」
「ええっ、、、、、。」
静まり返る教室、、、、。
「あっ、、、みんな、悪かった。実はこの涙はな、、、、さっき玉ねぎの微塵切りをしていた所為なんだよ。ほら、包丁もある。」
そういうと先生は包丁をジャケットから取り出しました。続いて、まな板も。
「えっ、、、、。」
「そんなあっ、、、、。」
「嘘だったのね......。」
みんな、がっかりです。がっかりしています。
ボトッ
あっ、再び何か落ちました。今度は生徒のたかし君の方から、それは、みじん切りにされた玉ねぎでした。
「あっ、しまった、、、、!!」
「えっ、、、まさかたかしもかよ、、、、。」
「偽りの涙だったのかよ、、、、、。」
ああ、教室の空気は悪くなる一方です。先生とたかし君はしょんぼりしています。
ボトッ、あっ、今度はみさこさんの服から、あっ、ともやくんの服からも、、、、。ボトッ、ボトッ、ボトッ、ボトッ、、、、、。そう、この感動はみんながみんなに偽った結果作り上げられたものだったのでした。しくしくしくしく、みんなの目から涙が。空っぽに、耐えられなかったのです。
完
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