メリーゴーランド事件

 らららーららーららー


 らららーららーららー


 メリーゴーランドがくるくるくるくる回転しています。くるくるくるくる、くるくるくるくる。たかしくんはその一つに乗っています。


「楽しいなーメリーゴーランド!!楽しいなー!!」  


 ゆったりと上下に動きながら優雅に回転するメリーゴーランド。


 らららーららーららー


 らららーららーららー


 ビービービービー


 ガッコーン


 突然動きが止まりました。


 なんだなんだー!!なんなんだー!!


「馬が逃げていきました。馬が逃げていきました。」


「ええっええっ!!どういうことだー!?」


 あたりを見回すと、三つくらい前に空間ができています。


「木馬が逃げたのか.....。」


 たかしくんは思いました。


 どこに逃げたんだ。どこに逃げたんだ......。あっ!!


 左の方を木馬がゆったり上下しながら前進しています。あいつか、あいつのせいで俺の楽しいメリーゴーランドが中断されちまったのか。


「くそっ!!くそ木馬め!!くそー!!」


 たかしくは木馬の上で怒ります。ふざけるなよ!!ふざけるなー!!


「早く!!早く捕まえろー!!」


 タタタタタターッ!!


 どこからともなく作業服を着た男が2人現れました。


「いたぞー!!あそこだー!!」


 クラゲのようにゆらゆら前進する木馬を追いかけます。


 バサァッ!!


 あっという間に追いつき、木馬を地面に押さえつけます。あっけなく、木馬は取り押さえられてしまいました。それはまるでビニール袋のように。


 ピクッピクッ、ピクッピクッ


 隙間から木馬がピクピク、ピクピクしているのが見えます。


「よし!!戻すぞ。俺は上を持つからお前は下を持て。」


「はい。」


「せーのっ!!」


 木馬を貫通している棒を掴まれ木馬は起き上がりました。ピクッピクッ、ピクッピクッと動いています。


「よいしょっ!!よいしょっ!!」


 横にされ、なすすべもなく運ばれていく木馬。


 ガチッ!!ガチッ!!


 あっという間にメリーゴーランドに固定されてしまいました。


「大変ご迷惑をおかけしました。再開致しまーす!!」


 元気なアナウンスと共にメリーゴーランドが動き始めました。しかし、たかしくんはさっきまでのように心からメリーゴーランドを楽しむことは出来ませんでした。


 完

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