トリケラトプス

 トリケラトプスは鼻が詰まって口呼吸になっている。うーん、薬局に行って点鼻薬を買ってこようかな。うーん、うーん。


 ドシーンドシーンドシーンドシーン


 薬局にはたくさんの薬が並んでいる。


 ドシーンドシーンドシーンドシーン


 トリケラトプスは店内を彷徨く。震える棚たち。


 ドシーンドシーンドシーンドシーン


 ないなあ。点鼻薬、ないなあ。店員さんに聞いてみるかなあ。


「あの、すみませーん!!」


「ぷぎゃおおおおおおん!!」


 ああ、店員はティラノサウルスだった。ああ。バトル、スタート。


 ディディッディーッディッ♪


 ディディッディーッディッ♪


 ディディッディーッディッ♪


 ディディッディーッディッ♪


 トリケラトプスは焦っていた。なぜなら口呼吸で本調子ではないから。達人同士の戦い。呼吸は戦局を左右するには充分すぎる要素だった。


 ディディッディーッディッ♪


 ディディッディーッディッ♪


 ディディッディーッディッ♪


 ディディッディーッディッ♪


「ぷぎゃおおおおおおん!!」


 ドシンドシンドシンドシンドシンドシン


 向かってくる、ティラノサウルス。


 ドシンドシンドシンドシンドシンドシン


 受けるしかない!!


「うりゃああああああああ!!」


「こらっ、ティラノサウルス君。やめなさい!!」


 店長さんがきた。ヒューマン。


「はあ、助かったあ.......。」


 安心してふと棚を見ると、点鼻薬がある。


「点鼻薬、下さい!!」


「ぷぎゃあ。」


 ティラノサウルスも、店長さんの前では大人しい。権威は秩序を生むのだ。


 完

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る