床になったたかし

 たかしくんは床になりました。


「床のあいさつ、ゆかようございます。」


「はい、ゆかよう、ゆかよう。」


「先生ゆかよう!!」


「はい、ゆかよう。ゆかよう。」


 床たちは口々挨拶します。たかし君もその一人です。


「みんなゆかよう。」


「はい、ゆかよう。ゆかよう。」


 トコトコトコトコ、トコトコトコトコ


 床の上を人間たちが歩いています。


 キャーキャー!!ワーワー!!


 キャーキャー!!ワーワー!!


 人間たちは元気がいいです。青春だー!!


「そういえばたかしくんは元々人間だったんだよね。」


 床のリーダー、たかお君が話しかけてきました。活発な子です。


「うん。そうだよ。元々人間だったんだ。」


「また人間になりたいとか思わないの?」


 心配そうに聞くたかおくん。


「うーん、いいかな、もう人間は。もう、いいかな....。」


「どうして?また人間になりなよ。人間になりな?」


「いや、いいんだ僕は。僕はもういいんだ.....。」


 たかおくん、顔に翳りが見えます。


「え、どうして?人間になりなよ。」


「そうだそうだー!!人間になりなよー!!」


「たかしぃ!!人間になれよー!!」


 周りの床たちが同調します。


「え、いいよ、、、いいよ、、、。うう、、。」


 たかし君は頭を抱え苦しみ始めました。苦しそう、苦しそうです。


「どうしたのさ?人間になりなよ?」


「たかしくんな〜り〜な〜よ〜。」


「たかし!!みんな待ってるよきっと!!」


「まだまだこれからだって!!」


「うるさい......!!うるさい!!うわああああああああああああああああああああああああああああああー!!」


 ああああ!!大変だあああああああああ!!


「わ、悪かったたかし....。」


 もう遅い!!


「ああああああああああああああああああああああ!!」

 

 ピョーーーーーーン!!


 たかしはマンホールになったのだ。


 完

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