バスケ部〜ダムになったたかし〜
俺は中学生ジョナサン、部活動に入るぜ。何部に入ろうか、迷っているぜ。今日はオリエンテーション、各部が自分をPRし、新入生を集めるのだ。まず、バスケットボール部から始まるらしい。
「バスケ部です!!」
元気な男子が元気な声を出す。
ダムダムダムダム、ダムダムダムダムダム
「このように、ダムダムドリブルします。ダムダムダムダム、いいでしょう。そのため、私達はダム部と呼ばれることも多く、高卒でダムに就職する人が多いです!!終わります!!」
イェ〜〜〜〜イ!!
盛り上がっている。いいな。いいな。私はダムに就職したかったのでバスケ部に決めた。
初日だ。
ダムダムダムダム、ダムダムダムダム
体育館、アリの巣の中のようにダムダムで埋まっている。すごい、憧れの景色だ。ダムで満たされた体育館。ああ、天国みたいだ。その中でも、奥の方。彼.....。一際力強くダムダムしている、彼....。
「よう、一年か?これからよろしくな。」
背の高いお兄さんが声をかけてきた。二年生の方だろうか。
「よろしくお願いします。」
挨拶をする。しかし、例の彼から目を離すことができない。素人目でも違いがすぐにわかる。じっと見てしまう。まるで工場のようにガタイがいい。
「ああ、彼かい?」
私の視線に気づいたようだ。
「は、はい、、、。」
「彼は見ての通り別格だよ。一年生の時から目をつけられててね、、。入学してすぐ、5月にはもうダムから内定をもらっていた。みんなは彼のことを『キングダム・たかし』と呼んでいるよ。」
「へ、へぇ。すごいんですね、、。」
「あぁ、すごい。悔しいけど敵わないよ、、。」
ダムダムダムダム、ダムダムダムダム
すごい。すごいドリブルだ。ダムから溢れ出る滝のようなドリブルだ。しかし、あれ、何か様子がおかしいような....。
ダムダムダムダム、ダムダムダムダム
「た、大変だ!!逃げろー!!」
「ん、なんだなんだ?」
「おい、キングダム・たかしをみろ。」
「や、やばい!!逃げろー!!みんな逃げろー!!」
ダムダムダムダム、ダムダムダムダム
なんと、ダムが出来ている。キングダム・たかしの周りに。
ダムダムダムダム、ダムダムダムダム
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
体育館が、学校が、飲み込まれていく。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
蟻地獄みたいに、飲み込まれていく。
「み、みんな、大丈夫かー!!」
「大丈夫!!みんないるぞ!!」
「みんな逃げた!!大丈夫!!大丈夫!!」
「ああ、俺たちの学校があ!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
もう学校は校舎の頭のほうにある、時計の辺りしか見えなくなっている。
「たかし!!たかしはどこにいるんだ!!たかしはどこに!!」
「いない!!いないぞ!!たかしがいない!!まさか、ダムになったのか!!」
そう、たかしはダムになったのだ。たかしの心の中のように、広い、広い、大きなダムに。
「うん、きっとそうだ。たかしは、キングダム・たかしは、ダムになったんだ。広い広い、大きな、ダムに。彼の心のように、大きなダムに。」
キャプテンの谷岡さんが、沈みゆく校舎を穏やかに眺めながら言った.....。
「うぅ、たかしぃ、たかしぃ。」
「キングダム・たかしぃ、、、。」
「たかしぃいいいぃいい!!」
「たかしさん!!たかしさん!!」
涙を流す、仲間たち....。たかしダムと名付けられたこの広く、大きなダムは、役に立たないため数日後埋め立てられ、その上に新たな校舎が建てられた。たかしダムは数日で人生を終えたのだ。しかし、たかしがつけていた背番号56(ゴム)は、永久欠番となった。たかしは、バスケ部の仲間たちの中で、永遠に生き続けるのであった......。
完
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