心霊写真の男
先週の旅行は楽しかった。久しぶりに大学の友人たちと遊んだのだ。たかと、りょう、みさこ、たこぴえ、私。5人で山へキャンプへいった。みんな変わっていなかった。しばらく会っていなくてもあの頃のように話すことができた。写真を見返す。キャンプファイヤーの写真。釣りをする写真。カレーを食べる写真。みんな笑っている。たかとの笑顔はやんちゃだ。茶髪でチャラチャラしているがいいやつだ。ああ、大学時代の写真も見たくなってきた。アルバムを開く。卒業式の写真。5人で取った写真。みんな満面の笑みだ。ん、いや、6人??、、誰だこれは、、私の背後、左肩のあたりにぼんやりと白い顔が、、中年男性のような、、、、真顔で何を考えているかわからない。なんだこれ、誰だ。全く見覚えがない、、、怖い、、怖い、、、、怖いよお、怖いよお、、、。怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。部屋に一人、怖すぎる。一人で抱え込むのは無理だ。Twitterにあげよう。共有して、恐怖を和らげてしまおう。私はそう考え、その写真をTwitterにあげたのであった。
「怖すぎワロタ。」
ツイート。
反応くるかな。数分、瞑想する..............。瞑想、完。見ると、通知欄は『20+』となっている。すでに100いいね。40リツイート。どんどんどんどん増えていく。ああ、通知が止まらない。すごい、すごい、すごい。ドーパミンが放出され、恐怖が和らいでいく。あっという間に1万リツイート、3万いいね。すごいすごい。
『怖すぎwww。』
『やべー、ガチじゃん。』
『神社行った方がいいと思うなー。』
様々なコメントがつけられる。そんな中、
『すみません。フシテレビのものなのですが、この写真をテレビで使用させて頂いてもいいでしょうか?』
お、あの有名なフシテレビから連絡が来たぞ。テレビで使いたいそうだ。テレビで使いたいのだな。いくら払ってくれるのだろう。
「いくら払ってくれるのでしょうか?」
「千円で如何でしょうか?」
返信が来た。安いな。ちょっとそれは安い。こっちは呪われるかもしれないのに。写真を見る。あれ、、さっきの白い男が見えなくなっている、、、、????不思議だ。まあいい。
「千円だと安すぎます。呪われるかもしれないので。」
「申し訳ございません。では3000円でどうでしょうか?」
うーむ。3000円か。もうちょっと欲しいな。ゲームのカセットも満足に買えない。写真を見る。さっきの男がうっすらと見えるようになっている....。まあ、もう一声。
「安いです。こっちは命をかけているのです。もっと欲しいです。」
「申し訳ございません。では、1万円で如何でしょうか。」
1万円か。まあいい値段かもしれない。写真を見る。私の後ろの肩にいたはずの男が私より前に写っている.....。全身真っ白で仁王立ちしている.....。まあ、試しにもう一声。
「ちょっと厳しいですね。もうちょっとください。」
「すみません。では、3万円でどうでしょうか?」
3万円か....。写真を見る。おかしい。男が浮き出ている。3Dになったみたいに、男の顔が画面から浮き出ている....。これ以上は危険だ。3万円で手をうとう。
「了解いたしました。では、3万円で。」
「ありがとうございます。では口座の方に後日振り込ませて頂きます。失礼いたしました。」
ふう、、男はまだ浮き出ている。突然口が動いた。
「俺に八割寄越せえ。」
しゃ、しゃべった。どす黒い声だ。怖い。恐ろしい。しかし、八割。
「は、はい。しかし、8割はですねちょっと、高いのではないでしょうか?8割は。私が連絡を取ったのですよ。私がいなかったらこんなに貰えていなかった。3割でどうですか?」
「舐めたことを言うな。俺がいなかったら一円も手に入らなかったんだぞ。6割、6割は寄越せ。」
た、確かにそうかもしれない。6割は、6割くらいは寄越してやろうか。
「は、はい。わかりました。6割で。ところで、何に使うのですか?」
「..........。」
沈黙。空気が凍る。一体、何に使うつもりなのだろうか.......。
「.............。」
男は黙ってしまった。なにやら考えている様子だ。チック、タック、時計の音が響き渡る。
「..........。」
もう、何時間だったかわからない。二人きりの時間....。空気も眠ってしまったようだ。しんと静まり返っている........。突然思い出したかのように男が口を開く。
「君に、あげるよ。」
彼は天使のような笑顔と共に、そう言った。
「あ、あぁ。」
ウルウル、ウルウル
私は感動し、涙を流した。
完
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