ある夏の日
ある夏の日、私は友達三人と山の広場で野球をしていた。山といっても十分歩けば住宅街が見えてくるような場所であるが、辺りは木々で覆われ、蝉の声が私たちを包み込んでいた。
キャッチボールをしていた。あいつがボールを投げそれを私がキャッチし、また別のやつに投げる。それをそいつがあいつに投げる。ということを繰り返していた。
ぽーん
ボールが飛んでくる。
がぼぼっ
ボールを落とす。おかしい。さっきまでは取れていたのに、取れなかった。ボールが悪かったわけでもない。さっきまでは取れていたのに取れなくなった。それはさっきとは何か変わったということ。時が経って変化が生じた。そう、暗くなったのだ。
「暗くなってきたし、帰ろう。」
「そうだね〜。」
「そうしよう。」
みんな賛成した。帰ることになった。
帰り支度をする。汚れたグローブを袋に詰め、それをエナメルバッグに詰める。ここから20分くらいでそれぞれのうちに着く。しかし、私はおしっこがしたかった。帰る前にトイレに行くことにしよう。しかし、トイレなんかあったかな。あたりを見回す。
あった。隅っこ。誰が処理してるのかわからないが、さびれた公衆便所が寂しくポツリと立っている。薄暗くてよく見えないが、広場の隅の隅、雑木林との境界にある。
「ちょっとトイレに行ってくるね。ごめんね、ちょっと待ってて。」
みんなにそう告げ、トイレに向かう。
たたたったたたっ
私の足音が響き渡る。
たたたったたたっ、たたたったたたっ
ついた。本当に錆びついている。誰もいなくなった夏祭り会場に一人取り残されているような気分だった。使えるかどうかわからないが、入ってみよう。
ぎいっ
思った通り、錆びた音がした。中は二段になっていて、和式だった。しかし、それだけじゃない。何かぶら下がっている。ゆらゆらゆれている。ゆらゆら、ゆらゆら、ゆらゆら、ゆらゆら。二本、ゆらゆら。まさか、足.....。恐る恐る上を見上げる。胴体、、、、、続いて人間の顔があった。目玉は飛び出し、体液があらゆる穴から噴き出している。首吊り死体だ。
ギャァ
私は振り返り外に出ようとした。しかし、ドアが開かない。ドンドンドン、ドンドンドン。必死にドアを叩く。ドンドンドン、ドンドンドンドン。ドンドンドンドンドンドンドンドンドン。
ぬちょっ
肩になにかが触れた。
「寂しかったよ。」
声がした。
喋っているようだ。首吊り死体が。恐ろしくて振り向くことはできない。足はもう動かない。そんな中私は声を振り絞り、話した。
「トイレにいるお化け、つまり、トイ霊。」
「違う!!私はたかしじゃ!!」
ズドーーーーン!!
アジャア
私は意識を失った.......。
しばらくして眼を覚ますと、おしっこを漏らしていた。めでたし、めでたし。
完
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