人格再分配法
「低人格者はどんどん人に嫌われていく。その結果彼らは余裕を失い、より低い人格を持つように。逆に高人格者はどんどん人に好かれ余裕を持つようになり、より高い人格を持つように。人格格差は必然のものであり、当人は自分の人格を自分で決定することができない。これは大変不公平なことだ。よって行政は人格の再分配を行わなければいけない。」
総理が言った。近年はひとびとのため四六時中働き続けるものと、全く働かず自由気ままな暮らしをしているくせに自分勝手な行動をして人に迷惑をかけるもの、人格の二極化が叫ばれていた。
「確かにその通りだ。国をより豊かにするため、より平等な世界を作るためにも行政で人格の再分配を行うこととしよう。」
大臣たちは納得した。人格再分配法は国会に提出され、あっという間にに可決された。国会の大半がが与党で占めたれていたためだ。十分な議論が行われず、反対意見は黙殺された。
「みなさん、人格再分配法が施行されるとみなが今より暮らしやすく、理想的な世界になります。なぜなら店員に怒鳴り散らすような人がこの世からいなくなるからです。」
総理は演説でそう説明した。国民の多くは喜んでいた。
早速人格再分配法が施行された。政府が国民一人一人に専用の透明カメラをくっつけ、24時間監視し続けた。そこに映された行動から政府はそれぞれ一人一人に人格得点をつけた。これは政府独自の基準によってつけられたものであった。毎日のように高人格者、低人格者が集められ、高人格者から人格を抽出、低人格者に人格を注入し、もといた場所へと運んだ。
あっという間に店員に怒鳴り散らすような人間はいなくなった。極端に好かれる人も極端に嫌われる人もいなくなり、平和な世界が作られた。皆前より過ごしやすいと喜んだ。内閣支持率は上昇した。
ある日戦争が起こった。国民の多くが戦場へかりだされた。国に命令され文句を言う人もいなかったと言う。
完
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