引きこもり、預言者になる
へにょん市にょへにょへ10-3-5
郵便受けに入った封筒の裏にはそう書かれていた。
「うーむ、誰だろう。覚えのない住所だ。」
びりびりびり〜
封筒を開く。中に何か紙が入っている。ちっちゃい、凍え死にそうな紙。なにか書いてある。取り敢えず読んでみる。
「あなたがこれを読む頃には、あなたは封筒を開いて中に入っている紙を読んでいることでしょう。」
ガクガクガクガク、ブルブルブルブル
ああ、震えが止まらない。当たっている。当たっている。何から何まで当たっている。私はこれを読む時、封筒を開いて紙に書いてある文字を読んでいるのだから、、、。予言者だぜ、こいつ。予言者だぜ。恐ろしいぜ。恐ろしいぜ。恐ろしいけど、これなら俺も預言者になれるのではないのかね。そう思った引きこもり、 早速行動を開始する。
スーパーのチラシとかティッシュペーパーとか、いろんな紙をまず集める。そして
「あなたがこれを読む頃には、あなたは封筒を開いて中に入っている紙を読んでいることでしょう。」
と書く。マップで実在する住所をいくつか調べ封筒に書く。さっきの紙を入れて発送する。
ふっふっふ、これで俺も予言者だぜ。自分に自信がついたぜ。引きこもりやめて就活するぜ。お母さんに報告だぜ。
トゥルルルルルルー
「お、お母さん。俺予言者になったぜ。すごいんだぜ。すごいから就活始めるぜ。」
「あらまあ、すごいねえ。頑張りなさい。」
ガチャリ。お母さんは適当に返事をし電話を切る。だが実はこれ、お母さんの策略だったのだ。お母さんがお母さんの友達の家の住所で息子に手紙を書いていたのだ。あれを読んだ息子があれを真似、予言者になることで自信をつけるだろうと思って。作戦は上手くいっていた。
一週間後、引きこもりは早速面接を受けにいった。机に座った面接官、男と女、一人ずつ。
「あなたの長所はなんですか?」
男が言った。
「はい、私は予言者です。予言ができます。」
「なぜそう言えるのですか?」
「はい、私はこの前、あなたがこれを読んでいるときは、あなたは封筒を開けてこれを読んでいるでしょう。と書かれた紙を封筒に入れて様々なところへ送りました。これは必ず当たるので予言です。よって私は予言者です。」
引きこもりは自信満々に答えた。しかし、
「いいえ、あなたの予言は外れましたわ。」
女の面接官が初めて口を開いた。
「な、なんで。そんなはずはない。」
動揺する引きこもり。
「いいえ、私はあの紙を読んだわ。でもね、封筒を開いたのは私ではなかった。夫が封筒を開いてあの紙を読み、その辺にほっぽり出していたのを私が読んだの。よってあなたは間違えた。あなたは予言者ではないわ。」
どうやら偶然この面接官のところに発送していたようだ。ガガーン!!
予言、失敗。引きこもりは面接をやめ家へ帰った。そして、あなたがこれを読んでいる頃には、あなたはこれを読んでいるでしょう、と書かれた紙を封筒に入れ、いろんなところに送るのであった。
完
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