ティッシュ

 くしゅんくしゅん、くしゅくしゅくしゅくしゅくしゅくしゅくしゅん、はっくしゅーんしゅーんはっくしゅーん


 花粉症の季節、私は大砲のようにくしゃみをする。


 くしゅくしゅーん、くしゅくしゅーん


 部屋の中なのにしゃみが止まらない酷いもんだもんだ。しかし、いくらくしゃみをしても問題ないのだ。なぜなら


 くしゅん!!くしゅん!!


 ふぁさふぁさふぁさ〜


 部屋に置いてあるティッシュ箱が私のくしゃみに共鳴くしゃみをしティッシュをこちらに飛ばしてくれるのだ。次世代式新型ティッシュ箱試作品なのだ。


 ありがとう


 私はティッシュ箱にお礼をし、蝶のようにひらひらと宙に浮いているティッシュをゲットした。


 チーン、チーン


 鼻をかむ。そんなにスッキリしなかったがとりあえず綺麗になったのである。ティッシュ箱を褒めてやらねば。


 なでなで、なでなで


 なでなでする。ティッシュ箱、反応がないがきっと喜んでいるだろう。


 なでなで、なでなで


 可愛いティッシュ箱だ。まるでペットのようだ。もっと撫でてやろう。


 なでなで、なでなで


 ぼうっ


 発火。


 ぼうぼうぼう


 火が大きくなっていく。これは欠陥だ。この程度撫でられただけで発火するなんて。摩擦熱で発火したのかね。熱に弱すぎるぜこれは。ティッシュ箱発明家の友人(試作品をくれた人。)に伝えなければいけない。ノートに「撫でられたことで簡単に発火。改良の必要あり」、とメモした。しかしこいつは試作品、それでいいのだ。物事は改良を繰り返し、完成して行くのだ。よってこれは成果だ。ティッシュ箱の発火しやすさを発見したのであーる。私は鼻高々になった。鼻高々になったがずっと鼻高々でいるわけにもいかない。火を消さなければ。どうしよう、どうしよう。と思っていると鼻からつーっと鼻水が水飴のように垂れてきてポツリと火の上に落ちた。


 じゅわわわー


 火は消え、鼻水も蒸発した。残ったのは、漆黒の灰。いい感じになった。私は涙した。死してなお、死してなおこのティッシュは私の鼻水を処理したのだ。未だかつてこんなティッシュの話は見聞きしたことがなかった。敬意を、敬意を示さなければ。


 ビシッ


 私は灰にビシッと敬礼した。火を消して敬礼するの、楽しいな。私は消防士になった。鼻水でたくさん火を消したよ。ヤッタネ!!


 完

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る