おしゅ死

 夕ご飯はおしゅしを食べるのだ!!しゅし屋に入るのだ!!


「へいらっしゃーーーい!!」


 頭に四角い帽子を被った寿司を握っている人々が言う。大きな声で、言う。私は椅子に座る。彼らに向かって、言う。


「マグロ一つ。」


「へい!!」


 彼らが返事をし、マグロを握り始める。正確にはマグロの寿司を握り始める。


「へい!お待ちい!」


 皿に乗ったマグロの寿司が私の前に差し出される。頼んだ甲斐があったぞ!食べようと手を伸ばす。


 ジジジジ


 なにやら音がする。なんの音だ。まるで、モーターの音のようだ。とりあえず、食べるのだ。マグロをつかもうとしたその時


ぴょんぴょぴょぴょんぴょんぴょーーーん


 おしゅし、跳ねる。カエルのようにぴょんぴょん跳ねる。


「ちょっと待ちなさい。君は私に食べられるんだ。」


ぴょんぴょぴょぴょんぴょんぴょーーーん、ぴょんぴょぴょぴょんぴょんぴょーーーん


 おしゅしは止まらない。跳び続ける。カエルのように跳び続ける。


「待て、おしゅし、待て、おしゅし。」


 私は中腰になっておしゅしを追う。小学校の帰り道でのカエル取りを思い出す。


ぴょんぴょぴょぴょんぴょんぴょーーーん、ぴょんぴょぴょぴょんぴょんぴょーーーん


「待ておしゅし、待ておしゅし。」


 ズドン


 おしゅしは壁にぶつかり、床に落ちた。しゃりを上にして仰向けに。死ぬ間際のセミのようにバタバタ動いていたが、間も無く動かなくなった。これはおしゅしの死、おしゅ死だ。


 そんなことを考えていると、店内BGMから木魚の音が、続いてお経が流れてきた。


おしゅ〜し〜し〜おしゅ〜し〜し〜おしゅ〜し〜し〜おしゅ〜し〜し〜


 さっきまでおしゅしを握っていた人々が帽子を取り、涙を流し始めた。


「うぅ、うぅ、おしゅしぃ、おしゅしぃ、メソメソメソメソメソメソ。メソメソメソメソ。」


 そんなことしてないで、早く作り直しさ〜〜〜〜〜〜い!!


 デンドデドーーーーーン!!


 完







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