え、つかれーたー
たったったったったっ、たったったったったっ
走る、走る。水平式エスカレーターの上を。
たったったったったっ、たったったったったっ
次の電車、1分後の電車に乗らなければ彼女とのデートに間に合わない。急げ急げ。
たったったったったっ、たったったったったっ、たったったったったっ、たったったったったっ、たっ、たっ、たっ、、た、たった
ん、スピードが落ちた。何故なのだろう。同じ速さで走っているはずなのに。なぜだろう。さっきよりも足が重くなったような気がする。突然風が止んだみたいに。んんん、うにゃあ、うにゃあ、うにゃあああ、どうやら、エスカレーターが止まったみたいだ。エスカレーターが止まったからその分遅くなったのだ。
たっ、たっ、たっ、たっ、
「おい、エスカレーター、動けよ!!動けよ!!」
私はエスカレーターを怒鳴りつけた。全力で走りながら。エスカレーター、なんて言うかな。わくわく、わくわく。わくわく、わくわく。
「え、つかれーたー。つかれーたー。」
エスカレーターが言った。
くそ、なんで疲れてんだよ。機械のくせによ。ふざけんなよ。このままじゃ電車に乗り遅れ彼女とのデートに遅れちまうじゃねえか。くそが、くそエスカレーターが。
たったたたったたったたったたっ
「ふざけんなよ!!ふざけんなよ!!」
「え、つかれーたー。え、つかれーたー。」
なんど怒鳴りつけても
「え、つかれーたー。」
くそ、ふざけやがって。後で訴えてやるぜ。
たったたたたったたたたたったたった
エスカレーターが止まろうが止まるまいが私は次の電車に乗って彼女とのデートに間に合わなければいけない。走るのだ、走るのだ。
バキュンバキュン!!
突然銃声が耳に飛び込んできた。ひゃあっ!私は伏せる。エスカレーターが終わるあたりのところに男が転がり込んできた。
「金、返すアルヨーー!!返すアルヨーー!!」
銃を持った女がその後ろから追いかけてくる。
バキューーン!!バキューーン!!
「ひぃ、借りてないよう、借りないよう。」
男はへっぴりごしになり、脇道へ逃げていく。
バキューーン!!バキューーン!!
女はそれを追いかける。どんどん銃声は遠くへ、、、。
ああ、助かった。私は安心して立ち上がる。もし、もしエスカレーターが変わらず動き続けていたら私は銃撃戦に巻き込まれて死んでいたかもしれない。それにしてもなぜエスカレーターは止まったんだ。もしかして、もしかして
「エスカレーターよ。もしかしてお前はこうなることを見越して、私を救うために止まったのか?そうだったのか?」
「え、つかれーたー。え、つかれーたー。」
うるうるうるうるうるうるうるう(目が感動により。)。私はしゃがみ、そっとエスカレーターにキスをするのだった。ねちょり。
完
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