昼休みのクジラ

 キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン


 四時間目が終わり、昼休みです。


 わーわーわー


 一斉に子供達が校庭に走り出しました。みな、追いかけっこやドッチボールなど、自由に遊べる時間です。


 わーい!!わーい!!たくさん遊ぶぞう。みんな一目散に下駄箱から靴をとり、校庭に向かって飛び出していきます。


 しかし、びっくり!!


 ドーーーーーーン!!


 なんとクジラが、校庭を覆っているのです。これでは自由に遊べません。迷惑なクジラです。


「ねえ、どうしよう。クジラが邪魔で遊べないよ。昼休み、30分しかないのに。早くどかさないと。」


「でも、ううん、どうしよう。僕たちの力ではこんなに大きなクジラ、動かせないよ。」


「とりあえず、先生に相談しよう。」


 そうしよう!!そうしよう!!


 みんな同意しました。そうと決まれば、職員室に行かなければ。代表して学級委員の村上くんが行くことになりました。


 トントン


「失礼します。あの、校庭にクジラがいて遊べません。どうすれば良いですか?」


「どうすればいいですか?じゃない。もう6年生だろ。自分で考えろ。自分たちで考えてから出直してこい。」


「はい。すみませんでした。」


 村上くんは校庭に戻り、みんなにその旨を伝えました。


「僕達は小学六年生なんだ。自分達で考えなきゃいけないよ。さあ、どうしよう。」


「うーん。じゃあまずクジラについてよく調べてみようよ。」


 生物係の貞子さんがいいました。


 そうしよう!!そうしよう!!


 みんな同意しました。


 ということで、みんなでクジラに近づきました。


 クジラ、つぶらな瞳をしている。ぷるぷるした瞳。愛嬌があって可愛らしい。巨大な口は半開きになっていて、これまたかわいい。しかし、肌がカサカサしている。水がないからだ。このままだとクジラは死んでしまう。


「大変だ。このままだとクジラさん、死んでしまうよ。」


「ほんとだよ。可哀想に。」


「命が、命が、失われてしまう、、、、。」


 うわーん、うわーん


 みんな、泣き始めました。クジラさんが死んでしまうよ。可哀想だ、可哀想だ、クジラさん、可哀想だ。


 涙が、ポツリ、ポツリ、校庭に落下していきます。


 ポツリ、ポツリ、ポツリ、ポツリ、ポツリポツリポツリポツリポツリポツリポツポツポツポツポツポツポツポッポッポッポッポポポポポポポポポポポポポ


 校庭に水が溜まっていき、水溜りができました。


 ポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポポ


 水はまだまだ溜まっていきます。すると、


 チョロチョロチョロチョロ、チョロチョロチョロチョロ


 流れ始めました。水溜りが決壊したのです。


 チョロチョロチョロチョロ、チョロチョロチョロチョロ


 それを見た、閃き係のひらこさんが叫びました。


 ピッカーーーーーーーーーーーーーン!!


 どうやら、なにか閃いたようです。


「ねえ、海まで水でクジラさんの通り道を作ってあげればいいんじゃない?」


 あっ!!いいじゃん!!


 私もそう思うー!!


 すごい!!ナイスアイディア!!


 みんな賛成のようです。そうと決まれば!!


「ねえ、みんな、実は僕のお父さん、消防署の偉い人なんだ。だから水はたくさん用意できるよ。」


 たくさんのコネ持ちのコネ太郎くんがいいました。


 そうと決まれば119番だ。


「はい、火事ですか、救急ですか。」


「救急です。私はコネ夫の息子のコネ太郎なのですが。あの、校庭にいるクジラが乾いて死んでしまいそうです。川を作って海まで泳がせて運びたいのですが。」


「了解致しました。救急ですが消防車を出動させた方がよさそうですね。出来る限りたくさんの消防車をそちらへ向かわせます。」


「ありがとう。では、頼んだ。」


 ガチャッ


「出来るだけたくさんの消防車を、こっちに向かわせてくれるって。」


 コネ太郎くんは髪をかきあげながら言いました。


 キャーーーーーーッ!!コネ太郎くん!素敵ぃぃぃぃ!!!


 女子たちは黄色い歓声をあげました。


「ふふふっ、これくらい、お手の物さ。」


 コネ太郎くんは得意げです。



 ウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥ、、、、


 そんなことをしている間にたくさんの消防車がやって来ました。数十台といったところでしょうか。


 放水、開始


 ジャバージャバージャバージャバー


 コネ太郎くんの合図により一斉に放水が始まりました。すごい威力です。しかし、まだ鯨が泳げるほどの水量はありません。


 ウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥ、、、


 そうこうしている間にもどんどん消防車が集まって来ます。全国各地から集まって来ているよう。数百台はいるでしょうか。流石にすごい水量です。クジラも流れ始めました。


 ウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥウーゥ、、、


 まだまだ増えて行きます。遂に鯨が泳げるほどの水の流れができました。


 スーイスイスイ


 クジラはどんどん海へ向かって泳いで行きます。しかし、


 タスケテクレーータスケテクレーー


 突然の水流に巻き込まれ、たくさんの人が流れて行きます。しかし、消防車は放水し続けます。


 ジャージャージャージャー


 ズゴゴゴガガガガーーーーーン!!

 ズゴガガズゴガガーーーーーン!!


 次第に車や家も流され始めました。


 スーイスイスイ、スーイスイスイ


 一方、クジラは楽しそうに泳いで行きます。


 頑張れ、クジラ!頑張れ、クジラ!


 子供たちは元気にクジラを応援しています。


 スーイスイスイ、スーイスイスイ、シュパーーーン!!


 遂にクジラは海に到着しました。


 やったー!!やったー!!バンザーイ!!バンザーイ!!


 子供たちは喜びました。一方海には家、車、人間などが、ぷかぷかと浮いていました。海に戻ったクジラは興奮し誤って人間を飲み込みました。血の色をした潮が噴水のように立ち上っていました。


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