足踏みおじさん
彼氏の家に遊びに行く。隣の隣の駅。電車に乗ろう、ガタンゴトン。
来た、はやく!!はやく彼氏に会いたい!!私は電車に飛び乗った。あいにく席は埋まっている。私は立っていた。背筋を伸ばしてピッピッピッ。早く!!彼氏にあってキスがしたい!!キスが、キスがしたい!!あまりにもキスがしたい!!しかし、周囲の見知らぬ人に突然キスをしたら狂人である。そこで私は財布から一万円を取りだし、福沢諭吉にキスをした。深い、深い、とろける、キスを、、。私の、諭吉ぃ、、
ムチューーー、ムチューーー、ムチューーー
ムニュッ
なんだ。右足に違和感を感じる。足元を見ると、隣のおじさんの足が私の足を踏んでいる。くそ、キス中の乙女の足を踏みやがって。注意しなければ。
「すみません。おじさん、私の足を踏んでおりますわ。」
「あ、本当だ。ところであなたも電車の床を踏んでいますよ。」
だからなんだと言うのだ。私は不快なのだ。
「どけて下さい。それにあなたも電車の床を踏んでいますよ。あなたは電車の床も私の足も踏んでいますわよ。」
「その通りだ。ならば君も私の足を踏んでみたらどうかね。すると、君の方が踏むことに。」
ほう、そうなのか。
ムニュッ
私は左足で私の右足を踏んでいるおじさんの左足を踏んだ。バランスを取るのが大変だ。つり革に捕まり必死にバランスを取った。つり革はミシミシ言いながら私の重さに耐えている。
「踏みましたわ。」
「踏みましたね。あなたは今、電車の床を踏んでいるあなたの右足を踏んでいるわたしの左足を踏んでいる。あなたの方が、踏んでいる。」
「あら、そうですわね。ならあなたも踏めばいいじゃないですか。」
(正直、計算の仕方がよくわからなかった。あなたの方が踏んでいるってなんだ?と思ったが、馬鹿にされるのがいやで知ったような口を聞いてしまったのだ。これが間違いだった。)
「もちろん。」
ムニュッ
おじさんの右足が電車の床を踏んでいる私の右足を踏んでいるおじさんの左足を踏んでいる私の左足を踏んだ。
おじさんもバランスを取るのが大変。つり革に捕まり、体を必死に揺らしながらバランスを取っている。私たちはまるで、網にかかったマグロのよう。ブリブリ、ブリブリ動いている。
どうしてこんなことをしているのだろう。私は考えた。どうして、、、、、。おじさんに聞いてみる。
「なぜこんなことをしているのですか。」
「それはね、今、生きているからだよ。」
深い!!!!私は感動し、胸を撃たれた。
バーーーーーン!!
血が流れる。ドクドク、ドクドク。私は倒れる、バタッ。意識が遠のいていく。どうやら私を撃ったのは目の前に座っている少年。
「つり革がかわいそうである。これはつり革のためだ。仕方がなかったのだ。」
少年は哀れんだ目で私を見つめ、言った。ああ、そうか、確かにつり革は痛そうだった。血が電車の床に充満する。かすれ行く意識の中私がみたのは、床に広がった血をすすっている、おじさん。ああ、この人、ドラキュラだったのか。にんにく、にんにく、食べなきゃ、、、。にんに食う、にんに食う、、、、。
その後
車内になっていた人々はみんなにんにく農家の方々で、にんにくを売りにいく途中だったため、たくさんにんにくを持っていました。みんなドラキュラににんにくを投げました。ドラキュラはにんにくを食べ、農家達にお金を払いました。ウィンウィンの関係。
電車も、道路も、ウォーターも、みんな地球を踏んでいる。
完
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