桜戦争

 春、桜ひらひら舞う季節。しかし、今年の桜は一味違った。木ごと舞っている。


 桜舞う、ブオーン、ブオーン


 無数の木が空で暴れている。衝突によりたくさんの建物が倒壊。地上は危険である。人々は地下に避難し暮らした。


 ドッガガガーーーンッ


 桜の木が建物に衝突し倒壊する音が聞こえる。もちろん逃げ遅れた人の中には建物の下敷きになったものも。自衛隊は地上で救助活動、戦闘機で桜との攻防をしている。しかし、劣勢。桜の動き、素早い。荒れ狂った象のよう。たくさんの戦闘機が墜落した。人々は怯えながら日々を過ごした。


 科学者たちはなぜこのような事態が生じたのか議論を重ねた。


「なぜだ、なぜこんなことが起きているのだ。」


「わからない。これは桜による人類への挑戦ではないか。」


「しかし、なぜ。」


 議論が平行線上をたどっている中、ある学者が言った。


「桜は怒っているのではないか。人々が春に『桜舞う、桜舞う。』とはしゃいでいることに。」


「どういうことだ。」


「僕らはよく、舞っているのは、桜の花びらなのに、桜が舞うとか言うじゃないか。僕らだって、頭をかきむしってふけがふわふわ舞っているのに対して、『人間舞う。』とか言われたら怒るだろう。」


「いや、別に怒りはしないと思うが。じゃあ、どうすればいい。」


「僕らは桜の花びらが舞っていると、ちゃんと認識していることを伝えるのさ。」


 そういうと博士は、拡声器を持って外に飛び出して行った。そして


「桜の花びら、ひーらひら、桜の花びら、ひーらひら」


 と叫んだ。すると、暴れていた桜達が静かになり、元々根を張っていた場所に、するりするりと帰っていくではありませんか。


 ジュポン、ジュポン


 みんな元のように根を張り、大人しくなった。めでたし、めでたし。


 それから、「桜舞う」とか「桜散る」とかいうことは法律で禁止され、言ったものは死刑になった。


 完

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