安全ヒーロー

 巨大化した怪人と、巨大ロボットが戦っている。


 ドンガラガッシャン、ドンガラガッシャン


 ジュババババー


 怪人ビームが炸裂。


 うわあああああ


 ドカン、ドカン、ドカン


 巨大ロボ、窮地に追い込まれる。


「はっはっはっ、もう終わりだ、諦めろ。世界は私たちが支配するのだ。」


「くそっ、そうはさせない。みんなの思いを、無駄にするものか。」


 傷だらけの巨大ロボ、立ち上がる。


「絆ビーーーーム!!」


 ビビビビビビビビーーーーーーッ!!


 ぐぎゃああああ!!


 怪人、苦しむ。


「ど、どこにそんな力があ。」


「みんなの思い、絆の力だ!!」


「お、の、れえええええ」


 ドッカーーーーーン


 巨大ロボ、勝利。


 ポチッ


 テレビの電源をきる。


 ああ、野菜戦隊ジャガイモジャー、今日も面白かったな。来週も楽しみだ。


 キッズ達が、喜んでいる。


 一方私は、苦情の電話をかけた。


 トゥルルルル〜、トゥルルルル〜


「はいもしもし、こちら野菜戦隊ジャガイモジャー制作事務局です。」


「もしもし、私、先ほどジャガイモジャーを見たものですが、少し思うところがありまして。」


「はい、なんでしょう。」


「少し、教育上よろしくないのではないかと思いましてね。」


「というと?」


「あんな危険なロボに人を乗せてもよいのですか。まるで自己犠牲が美徳のようだ。思うにね、ヒーロー達があんな状態で恐怖を感じないのは、アドレナリンのせいなのですよ。アドレナリンが分泌されているせいで、感覚が麻痺してしまっているのです。絆の力ではなく、アドレナリンの力なのです。巨大ロボで戦うにしても、せめて遠隔操作にした方が良いのではないですか?」


「うーん、確かに。それはこちらでも何度か議論されてきたことなんです。でも、遠隔操作にすると恐らくアドレナリンが分泌されず、ヒーローが負けてしまうのですよ。ロボットにはヒーロー達の気持ちが反映される仕組みなので。」


「アドレナリン頼みでヒーローをあんな危険に晒すのですか?本当に教育上よくない番組だ。もっと自分を大切にすることを学ばせるべきです。」


 次の週。


 怪人B、街に出現


 大変だ!!しかし、ヒーロー達は街に向かはない。なぜなら、巨大ロボ、遠隔操作ができるよう、改造されたからだ。


 ヒーロー達は居間に行き、ゲームのコントローラーのようなものを手にする。これでロボを操作するのだ。画面にはロボが映し出されている。レッド、早速Bボタンをプッシュ。巨大ロボ、出動です。


 ガッシャン、ガッシャン


 怪人B、驚く。


 いきなり巨大ロボが来るとは、この姿では勝てない、巨大化しなければ。


 ドッカーーーーーン


 怪人B、自主爆発。なぜなら怪人達は、一度爆発しなければ巨大化できないからだ。


 ニョキニョキニョキ


 巨大化、成功。


 ポチポチ、ポチポチ


 ヒーロー達は頑張ってコントローラーを操作する。


 ガッシャン、ガッシャン


 巨大ロボと怪人B、戦う、戦う。


 ビビビビビビビビーーーーーーッ


 怪人Bの、怪人ビームが炸裂。


 ドッカーン、ドッカーン


 ロボ、ダメージを受け、動かなくなった。


 ヒーロー達は困った。動力装置のAボタンを連打する。


 ポチポチポチポチポチポチポチポチ


 巨大ロボは動かない。


 そうこうしている間に再び怪人ビームが、


 ビビビビビビビビーーーーーーッ


 ドッカーーーーーン


 巨大ロボ、完全に爆発。


 乗ってなくてよかった。ヒーロー達は安心した。


 敵がいなくなり、怪人Bは好き放題街を荒らす。


 グジャジャジャジャジャジャー


 大変だ、こっちまで来るぞ。


 ヒーロー達はジャガイモマシンに乗り、月へ逃げた。


 ホワンホワンホワワーン


 残された人間達は怪人達に襲われ死に絶えた。地球は支配された。一方月では、ピンクが他のヒーローと子作り。たくさん子供が生まれ、ヒーロー一族が栄えた。


 ポチッ


 テレビの電源をきる。


 なんなんだ、これは


 キッズ達、絶望。


 完












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