フランツ・カフェ化

 夏休み、今日は友人のフランツ・太郎君の家に遊びに行こう。

 家を出る。歩いて10分。着いたー。


 ノックする。


 コンコンコン


 返事がない。


「太郎くーん、遊ぼうよー。」


 返事がない。


 ゾゾゾゾゾゾゾ


 悪寒が走る。太郎君の身に、何かあったのではないか。


 ガチャガチャガチャガチャ


 鍵が掛かっていて入れない。


 ブイイイイイイーーーーーーン


 私はチェーンソーでドアを壊し、中に入った。玄関を抜け、リビングに入る。そこには、カフェがあった。前までは、なかったのに。


 せっかくのカフェだ。安らごう。


 お茶を作り、飲んだ。


 ゴクゴクゴク


 ふぅ、


 よし、別の場所も探してみよう。


 台所にきた。なんとここにも、カフェがある。


 お茶を作り、飲んだ。


 ゴクゴクゴク


 ふぅ


 別の場所も、探してみよう。


 トイレに来た。なんと、ここにも、カフェがある。しかし、小さい。これでは、落ち着いて、お茶が飲めない。


 おしっこをした。


 シーシーシー


 ふぅ


 それにしても、フランツ・太郎君はいないし、家族もいない。状況を、整理してみよう。


 フランツ家は、太郎君、母、父の3人暮らし。そして、現在彼らは見つからず、カフェが3つ、、。はっ、まさか、、、カフェ、元々はフランツ家の人々ではなかったのか。フランツ家の人々が突然、カフェになってしまったのではないか。そう考えると、全て、辻褄が、あう。


 フランツが、カフェになる、つまり、、、フランツ、カフェ化、である。これは、フランツ・カフカに似ている、、、はっ!!!!!もしや!!。フランツ・カフカが、生前評価されなかったのを恨んで、現在のフランツ達を、カフェ化しているのではないか!!いや、間違いない、そうとしか考えられないぞ。


 こうなったら、カフカを呼んで、確かめるしかない。私は友達のいたこにお願いした。


「カフカが、現代のフランツ達をカフェ化している。やめさせなくてはならない。フランツ・カフカを、呼び出してくれ。」


「それは大変だ。わかった。カフカを、呼び出そう。」


 ハアアアアアアアアアアアアアアアア


 暗雲が立ち込め、木々は騒めき、地響きが轟く


 ジヒジヒジヒ


 雷がいたこの上に落ちました。


 バリバーリーバリバリ


 ウウッ


 いたこが、呻いた。


 しばらく沈黙が続いた。死んだかな、と思っていたころ、口が動いた。


「私はカフカ、フランツ・カフカだ。あなたは誰。ここはどこ。」


「俺はさとし、ここはジャパーン。」


「なるほど。私に、なんの用ですか。」


「私の友人の、フランツ・太郎が、カフェ化した。また、その家族も、カフェ化したのだ。」


「それは大変ですね。この世は本当に理不尽だ。ところで私に、なんのようですか。」


「とぼけるんじゃない。お前のせいだろう。」


「何を言っているのか、訳がわかりません。なぜ私を疑うのですか。」


「フランツ一家が、カフェ化した。つまり、フランツ、カフェ化、だ。これは、あなたの名前に大変似ている。だからお前のせいだと言っているのだ。カフェになってしまったら、動くことすらできない。虫になるより、酷いではないか。」


(こいつとは、会話ができない......さっさと帰ろう。)


「さらばだ、さとし。」


 ドロンッ


 カフカは天国へ帰って行った。


 アヘェ


 いたこがいたこに戻った。


「カフカは帰っていきましたよ。」


「くそっ!!逃げやがって!!」


 私は腹が立ち、いたこを殴った。


 バーン


 いたこは痛がった。


 イタッ、(コ)


 なんとしてもカフカの仕業だと認めさせてやる。私は証拠集めに再びフランツ家へ向かった。


 家に着いた。中から音がする。入ってみると、フランツ・太郎がカフェを金槌で壊している。


「おい、太郎。お前、どこ行ってたんだよ。」


「ああ、さっきまで旅行に行ってたんだ。今帰ってきたとこ。」


「ええ、じゃあ、カフェになったんじゃなかったのか。」


「ん、何言ってんだ。このカフェはな、旅行に行く前に、カフェがうちの中にあったらいいかも、と思って、一人1つ作ったんだ、けどよ、やっぱいらねえわ、邪魔だわ。あと、扉がなんかわかんねえけどめちゃくちゃにされてたんだよな。まあ、この扉はMだからいいんだけどよ。」


 ガツガツガツガツ


 壊しています。カフェを、壊しています。


 私は、カフカ全集を買い、帰った。


 完



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