バナナの皮

 その年のノーベル平和賞はバナナの皮に与えられた。


 理由。とある独裁国家が軍事実験を頻繁に行い、各国に挑発していた。緊張が高まり、戦争秒読み、というところでその国の独裁者Kがバナナの皮で足を滑らせ、頭を打ち死亡。戦争が回避されたため。以上。


 しかし、ノーベル平和賞がバナナの皮と発表されたとき、人々は反対した。


「ノーベル平和賞は人間に送られるべきだ。」


「バナナの皮は、人間ではないのではないだろうか。」


 といったものであった。もっともである。


「バナナの皮は人間だ。」


 という理解不能な主張をする人間もいたが、理解不能だったため、却下された。


 では、誰に与えられるべきか。ノーベル賞決定委員会の人々は議論した。長い議論の末、そのバナナを食べて捨てた人に与えようということになった。バナナの皮をくまなく調査した結果、その人物は独裁者Kであることが判明。元独裁者Kは、このことを知り、あの世で喜んだ。


 やったぜ!!


 しかし、独裁者Kは既に死んでしまっている。これでは、与えられない。元独裁者Kはあの世で悲しんだ。


 悲しいぜ!!


 再び議論。議論は白熱し、戦争が起こった。たくさんの人が死んだ。長い議論という名の戦争の末、例のバナナを育てた人間に与えよう、ということになった。調査の結果、町外れのバナナ農家、バナナナナさんが育てたこと判明。早速ノーベル平和賞が発表された。今度こそうまくいくと思われたが、今度はバナナナナさんが抗議してきた。


「バナナを育てたのは私ではない。バナナの木だ。」


 そのとうりだ。しかし、ノーベル賞を木に与えることはできない。ノーベル賞決定委員会の人々は議論した。再び議論は白熱し、戦争になった。人類は3人になった。議論(戦争)の結果、ノーベル賞は木専門の賞となったので、例のバナナの木に与えられることが決定。しかし、戦争で例のバナナの木は焼けてしまっていた。残った人類3名でじゃんけん。でも、誰も木になりたがらなかったので、ノーベル平和賞は誰にも与えられなかった。


 完




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る