恋人はサンタ食う
私には恋人がいる。名前はミカ。とても美しく、ショートヘアーがよく似合った。彼女はサンタを食う。
サンタクロースは実在する。ほとんどの人間には認知されていないが、サンタクロース族という民族が存在し、クリスマスの夜に世界中の子供達にプレゼントを配っている。そして、彼らはプレゼントを配った直後食われる。このことを知っているのは私とミカだけだ。サンタクロース族は普通の人間たちには知られてはいけない、伝説上の存在でなければいけないのだ。よって、行方不明になっても捜索願を警察に提出することはできない。もし提出したら存在を知られてしまうからだ。このことを利用して、ミカはサンタクロースを食っていた。
サンタクロース族内においては、プレゼント配布後に行方不明になることはある種の常識になっていた。そのため、ほとんどのサンタクロース族人はプレゼント配布に行きたがらない。だが、プレゼント配布には行かなければならない。一族の伝統だからだ。その年のプレゼント配布役はくじびきで決められる。当たりくじを引いてしまった時、多くの場合その人は泣き崩れる。その家族も泣き崩れる。しかし、当たりくじを引いたのにプレゼント配布から逃げた場合、その人物はいちじくかんちょうをうたれる。彼らのいちじくかんちょうの発射速度は、音速を超え、ケツから入れられたかんちょうは体内を貫通する。よっていちじくかんちょうは死を意味するのだった。なので、選ばれた人は遺書を書き、プレゼント配布に出発するのだった。
今年もクリスマスがやってきた。
「ねえ、サンタ食べるの、やめたら?」
ミカに言ってみた。
「いやだわ、私、食べたいんだもの。」
食べたいなら仕方ない。僕は、そんなミカが大好き。今年は一緒についていくことにした。
ちょうどプレゼント配布が終わったサンタ。一息ついて、ツイッターをしている。それをミカが見つけた。ミカがサンタに近づく。例年ならここからミカがサンタを襲い、一瞬で捕食する。
だが、今年のサンタは一味違った。なんと、いちじくかんちょうを、持っていたのだ。
身の危険を感じたサンタ、いちじくかんちょうをミカめがけて、ビュッ、ビュッ。
ミカ、倒れる。
ミカ!!僕のミカ!!
目を涙が覆った。このサンタめ、最愛のミカを奪いやがって。ぶっ殺してやる。
と、ここで考える。ここで私がサンタを殺したとして、それは僕もまたこの世を支配する憎しみの連鎖の一部になるということではないだろうか。それは、よくない。
僕はサンタと握手をした。共に世界平和を願った。
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