15㎝先の君へ


ねぇ、優希。

初めて君と会ったあの日のことを思い出すよ。


まだ幼かった僕たちが、初めて会ったあの日。

僕が君の家の隣に引っ越して来て、両親に連れられて挨拶に行ったよね。


僕より二つ年上の君は、僕に優しく接してくれた。

大して楽しくもなかっただろうに、僕との遊びに付き合ってくれた。


そんな優しい君だったから、憧れたのだと思う。恋をしたのだと思う。

そして今も変わらず、愛しているのだと思うよ。


写真が嫌いだった君には、もう記憶の中でしか会えない。

そんな風に絶望したのが、この物語を紡ぐきっかけだった。


僕はもう一度だけ、君に会いたかった。

君のくれた万年筆が僕を君の元へと導いてくれる気がして。


だけど、今はこの万年筆が憎らしいよ。

このたった15cmほどの万年筆だけが、僕と君を隔てているのだから。


今はどうにもならないこの壁を、僕もいつか越えるときが来るのだろう。


その時は、僕たちの子どもの亜子も立派な大人になっているだろう。

結婚なんかもして、僕は孫に恵まれているかもしれないね。


君はそれまで、待っていてくれるだろうか。

僕が君の側に行く、その時まで。


もしも待っていてくれるのなら嬉しい。

君に話したいことが沢山あるんだ。


つい先日も、亜子が二足歩行を覚えてね……。

……っと、この続きはそっちで話すときまでとっておくことにしようか。


あの頃のように、一緒に甘いものでも食べながらお喋りをしよう。


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15cm先の君へ 高殿アカリ @akari_takadono

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