PEAXION|MANIACS-ピージオン・マニアクス-

東雲メメ

これだけ読めば大丈夫! PEAXION総集編

総集編 Vol.01『Nonviolence Thinker』

※注意※

・Vol.01エピローグまでのネタバレを含みます。ですので『Vol.01を最後まで読了済みの方』もしくは『いきなり総集編から読もうとするチャレンジ精神旺盛の方』のみご覧ください。


















 これは、一人の平和主義者の少年が、戦争という行為に抗い続ける物語である。


 西暦2281年。人類が、スペースコロニーと呼ばれる人口の大地を浮かべ生活圏を宇宙へと広げ始めてから、既に1世紀半という長い年月が過ぎ、その開発の手は太陽系第5惑星こと木星まで伸びていた。

 そういった輝かしい発展を遂げる一方で、弾圧によるコロニーの武力占領統治を行う国連治安維持部隊『U3F』に対して反感を覚える住民も少なくはなく、素性不明の仮面の男・オミクロンが率いる反政府組織同盟『インデペンデンス・ステイト』のような存在が現れるのは至極当然の流れであった。


 そのような時代ではあるものの、地球圏から最も遠い木星圏までは戦火が及ばず、比較的平和であるといえた。

 木星圏のL5コロニー『ミストガーデン』に住むアレックス=マイヤーズは、平和主義の少年である。彼は極端に暴力を振るうことを嫌い、たとえ理不尽な理由で殴られても反撃するような事はなかった。アレックスの態度を快く思わない不良達から日常的に受けているいじめは、日を増すごとにエスカレートしていく一方であり、彼の日常は“平和”の枠の中にはあっても、決して“平穏”ではなかった。

 そんなアレックスにも同じ児童養護施設に住むしっかり者の少女エリー=キュル=ペッパーや、生意気だがどこか憎めない少年テオドア=グニス、実妹のミリア=マイヤーズなどの理解者がおり、彼女らと過ごす日常に微かながらも心の“平穏”を感じており、それを大切にしていたのだった。


 そんなある日、平和だと思われていた『ミスト・ガーデン』に、突如としてインデペンデンス・ステイトのダイバーシティ・ウォーカー(多目的人型兵器。略称DSW)の大部隊が押し寄せる。彼らの狙いは、巨大軍事産業企業複合体『LOCAS.T.C.ルーカス・ティー・シー』の指導のもと、U3Fの駐留基地にて極秘裏に造られていた白きDSW・ピージオンの奪取であった。


 戦場と化したコロニーで逃げ惑うアレックスとエリー、ミリア、テオドアの四人は途中、同じく戦闘に巻き込まれてしまったエリーの後輩であるミランダ=ミラーと合流しながら、空いている退避シェルターを捜して彷徨っていた。

 五人は瓦礫の下敷きになってしまい動けなくなっていた不良のデフ=ハーレイと、お喋りだが小心者のミド=シャウネルを発見し、必死に瓦礫をどかそうとする。が、その努力も虚しく、瓦礫はちっとも動かない。そんな最中、彼らのすぐ近くに暴走したトレーラーが突っ込んできたのだった。トレーラーの荷台に乗ったコンテナを確認すると、中身は輸送中のDSW・ピージオンだった。アレックスは瓦礫を持ち上げるために、ピージオンを起動させる。


 ピージオンに搭載されていた搭乗者支援AI“エラーズ”の操縦サポートもあり、アレックスはDSWを動かすことができ、瓦礫は取り除かれた。なんとか一命をとりとめたデフとミドであったが、そんな喜びもつかの間、ピージオンを狙ったインデペンデンス・ステイトのDSWが襲撃を仕掛けてきたのだった。

 アレックスは仲間たちを守りたい一心で、辛くもこれを撃破するが、不本意とはいえ初めて人を殺してしまったことから、後悔と自責の念に苛まれてしまう。


 戦闘の後、一同は負傷していたU3Fの兵士グレゴール=ノイマン中佐に拳銃で脅され、宇宙港までピージオンを運ぶことを強要されてしまう。

 かくして、宇宙港へと繋がるリニア・トレインの駅にたどり着いた一同だったが、またもやインデペンデンス・ステイトの強襲を受ける。

 ピージオンに乗るアレックスは応戦しようとするが、先ほどの戦闘のトラウマから、引き金を引けない状態に陥ってしまっていた。アレックスは絶体絶命のピンチに陥るが、宇宙海賊と称されるDSW部隊の乱入により、九死に一生を得る。

 しかし、海賊の狙いもまたピージオンであり、彼らはインデペンデンス・ステイトの部隊を撃退すると、今度はピージオンに襲いかかってきたのだった。銃を使えないアレックスはまともに応戦することすらできず、さらに仲間たちを人質に取られ、海賊に連れ去られてしまう。


 残された一同は、アレックスが海賊部隊に連れ去られしまったことの悲しみに暮れながらも、無事に宇宙港へとたどり着いた。脱出ポッドを使い『ミスト・ガーデン』を飛び立った彼らは、ピージオンを奪取していった海賊たちを追うU3Fの追撃艦に救助される。

 軍に保護されたことで一時は安心しきっていた一同だったが、ピージオンという機密に触れてしまったという理由から、U3Fに拘束されてしまうのだった。


 一方、海賊部隊こと宇宙義賊コスモフリートに連行されたアレックスだったが、予想に反して尋問や拷問などは行われず、軟禁状態にあった。無法者の海賊というイメージからは程遠いクルーたちを見て、彼らの認識を改めるアレックス。だがとうとう、U3Fの追撃部隊がコスモフリートに追いついてしまい、両者は戦闘へと突入する。

 アレックスはピージオンで出撃するよう促されたが、理不尽な要求に耐えかねた彼は思わず拒否してしまう。戦況は当初こそコスモフリートが優勢だったが、物量で勝るU3Fが消耗戦を仕掛けてきたことにより、コスモフリートは撃墜の危機に瀕してしまう。

 しかし、葛藤を乗り越え戦うことを決意したアレックスは出撃し、電子戦に特化したピージオンの機体性能を上手く引き出し、仲間たちを支援し勝利に導いた。

 時を同じくして、U3Fに囚われてしまったエリー達に同情したグレゴールは、自分の命と引き換えに彼女たちを戦艦から脱出させる。エリー達はアレックスの要望によりコスモフリートに受け入れられ、アレックスは再び“平穏”を取り戻したのだった。


 木星圏での戦いから約一ヶ月。アステロイドベルトを抜けたコスモフリートたちに待ち構えていたのは、インデペンデンス・ステイトの創始者オミクロンからの会談の申し入れであった。コスモフリート側はこれに応じ、アレックスを含めた代表者がインデペンデンス・ステイトの戦艦へと向かう。

 会談の内容は、インデペンデンス・ステイトがコスモフリートと同盟を結びたいという趣旨のものであった。法で裁けぬ悪を裁くために、あえてアウトサイダーに徹することを行動理念とするコスモフリートはこれを拒否し、交渉は決裂する。それはつまり、世界の二大勢力の片側であるインデペンデンス・ステイトを敵に回すことを意味していた。


 かくして、コスモフリートとインデペンデンス・ステイトの艦隊は戦闘状態へと移行していく。アレックスもピージオンに乗って出撃するが、以前のトラウマにより相変わらず敵機を撃てない彼は、被撃墜の危機に瀕してしまう。しかし、寸前のところでピージオンに秘められていたもう一つのAI“フリーズ”が目覚め、他の兵器を制御下に置くシステム『マスター・ピース・プログラム』が発動されてしまった。


 機体の保護を優先させた“フリーズ”は『マスター・ピース・プログラム』を用いて敵機を強制的に機能停止、自爆、同士討ちに追い込み、一瞬にして戦場を制した。実はピージオンは、全世界の兵器を制御下に置くことで全人類に恐怖を認識させ、抑止力となることで戦争の起こらない平和な世界の実現を目指す“マスター・ピース・プロジェクト”の要として開発されたDSWだったのだ。

 真相をフリーズにより明かされたアレックスは、『そのような世界は戦争が起こらないというだけで、平和ではあるが平穏ではない』としてこれを否定。計画の実行を強行するフリーズを止めるために、アレックスはコックピットを破壊すると言いフリーズを脅迫する。

 最終的には意地の張り合いとなり、結果的にフリーズは根負けに追い込まれるのだった。


 こうして戦闘は終わり、再びコスモフリートにいる仲間達のもとへと帰ってきたアレックスは、『マスター・ピース・プロジェクト』を否定、すなわち戦争の早期終結を止めてしまったことへの贖罪として『平和であり“平穏”が守られる世界』を実現する方法を、一生をかけて探してみせると誓うのだった。

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