パフェ・ハーフタイム・銀行

ホイッスルがグラウンドに響くと、各機はゆっくりと各々の自陣のドックへと戻っていった。赤、青、黄。ドック内はすぐに色とりどりのアスレチクススーツで溢れかえる。僕も、機体を止め、コックピットから出た。鬱陶しいヘルメットを脱ぎ、スーツのジッパーを緩めながら控室へと向かっていると、知り合いのメカニックに話しかけられた。

「お疲れ様、パフェ冷えてるよ」

「食えないって……」

思いがけぬ激戦に、疲れ果てていて食事どころではない。スポーツドリンクやアメならまだしも、重いスイーツは試合後だろうと食べられそうにない。

椅子に深く腰掛けて息を整える。アイマスクをつけて目を休ませながら、監督の指示を聞く。彼の指示は分かりやすく、目をつぶっていても自分の動きが目の前で再現されるようだ。

「以上だ。何か質問は?」

僕自身は質問がないが、監督の問いかけにアイマスクを外して周囲を見渡す。他のチームメイトも質問は無いようだ。

「それでは、後半も頼む」

同時に、ハーフタイムの終了を告げる予鈴が鳴った。皆で揃ってドックに向かっていると、先ほどのメカニックを見つけた。

「デザート、食べて良いよ」

「マジ!? やった~!」

太った体を震わせて、全身で喜びを表現する。メカニックよりもエンターテイナーやコメディアンの方が向いているのではないかと錯覚してしまう。無論、十年来の付き合いになる仲だ。今更、彼に辞められては僕が困ってしまう。

「がんばってね」

コックピットに乗り込むと、機体の外で彼が手を振っているのが見えた。親指を立てて返答する。直後、ハーフタイムの終了を告げるブザーが鳴る。チームメイトの機体が順次、カタパルトから飛び出していく。

「十一号機、しろがね行きます!」

掛け声とともに、僕の機体も飛び出した。

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