第3話キルフェボンのタルト 1



鏡の中の私は完璧だ。

その事を嬉しく思い、唇が弧を描く。


メイクは出来るだけ崩れにくく、ナチュラルに、最後には定番の嫁リップと呼ばれているイブサンローランのをリップブラシで丁寧に塗り込んで完成。洋服は紺のガウチョを中心に上品、且つ、動きやすいのを選ぶ事にした。トップスは、靴はレペットの紺の履き慣れたバレーシューズ、そして、少し小さめの斜め掛けの紺のポシェット。最後に、中身をチェックする、ハンカチ、ティシュ、口紅、財布、後は携帯も入れた。忘れ物はない。家を出る前に姿見で前後をチェックした。よし、完璧だ。


今日は久々のデート。

彼は昨日のラインでは今日はとっておきのお店に連れて行くと言っていた。彼だけの特別な場所に私を招待してくれるのだという、心躍る約束に期待を募らせる。


待ち合わせの時間まで後1時間



待ち合わせよりも少し早く着いた。念の為に彼にラインを。「今、待ち合わせ場所に着いたよ〜」在り来たりな言葉を送った。普段はラインをしない人だし、返信が来るまで少しだけ時間がかかるかもしれないと。ピロン。あ、返信。中を開けてみると、「僕は今、着いたよ!どこらへんにいる?」

あ、嗚呼、私今更ながら緊張している。彼がとっておきの場所に連れて行くと言ってから私は靴以外は新しく購入して万全の体制を整えていた。彼のいう一つ一つに一喜一憂していてなんだか馬鹿みたい。いままでの私とは別人みたい。



「あ!見つけた!」

大きな声が聞こえた。


今、私の目の前には彼がいる。心臓の音が早くて痛い。


「じゃあ、行こっか」、といい彼は私の手を取る。「手、繋ぐの?」恥ずかしすぎて出してしまった言葉。「?」不思議そうに私を見るけど、手は繋がれたまま。そのまま、彼はどんどん歩いてしまう。おしゃべりもせずに歩くのは寂しいけど、彼の耳が真っ赤になっていたので、少しは嬉しかった。今日は、何時もよりは、少しでも可愛く見えたかな。例え、自惚れでもいいけどね。


このまま、この時間が永遠に続けばいいのになんて思ったのは私だけの秘密。



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