白と黒の異世界伝説

皐月☆良いことある。

第1章 0話 プロローグ

平和だ。


黒板に書かれた文字の羅列を眺めながら俺は思った。

俺を含めここにいるクラスメイト勢員が、平和を当たり前のことだと思っているだろう。

みんな平和ボケしているんだ。

平和が悪いとは言っていない、しかし、その平和が壊れた時、俺たちは果たして生きることができるのだろうか。

答えはどちらとも言えない。

平和という目標を目指して進む者、諦めて立ち止まる者。

それぞれだ。

俺だったら間違いなく立ち止まる。

これまでの17年間、下を向いてなんとなくやり過ごしてきたから諦めるもクソも無い、もともと選択肢は一つだ。

学校の終わりを告げるチャイムが鳴り響き、俺は教室から出る。

昇降口に着いた時、外を見ると雨が刺すように降っていた。

青かった空も、いつの間にか黒くなっていた。


「傘、忘れた」


学校に残るのが嫌だった俺は、雨の中走って帰ることにした。


「はあ、はあ」


地に足がつくたびに水しぶきが上がる。

家と学校の中間に位置する信号が見えてきた時、反対側の歩道を歩いていた少女が被っていた帽子が飛んだ。

帽子は風に煽られ、歩道から道路へと転がっていった。

それを追いかけ少女は道路へと飛び出した。

少女の後ろからはトラックが向かう。


馬鹿野郎!


「おいっ!あぶねぇぞ!」


俺は叫ぶと同時に飛び出した。

勢いのまま少女を歩道へと突き飛ばす。

その瞬間、視点がぐらついたと思ったら、俺の体は宙を舞っていた。

いつの間にか雨は止んでいて、眩しい夕焼けが俺を照らして、悲しいくらいに綺麗だった。


ああ、綺麗だな......


そのまま地面に落ちる。

微かに残る意識の中、頭に浮かぶのは母親の事だった。


「かぁ......さん......ご...めん」


そこで俺のたった17年間の人生が幕を閉じた。

そう、終わったのだ。

始まりと終わりの違いはいつでも紙一重だ。

だから終わりは始まりでもあり、始まりは終わりでもある。


さあ始めよう、再び。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る