2 姫


少女が1人、何も持たずに歩いていく。先にあるのは崖だというのにずんずん進んでいく。私が止めんとする声を発する前に、少女は此方を振り返って笑った。夕日に映える、向日葵のような笑顔であった。


彼女はそのままゆらりと後ろに倒れていく。もう止める気はなかった。彼女は気高い姫だったから。気高いまま、純真なままその生命を弾けさせるのが美しいのだと、そう悟った夕だった。

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