『雪のふらない聖夜』(課題:雪)2016/8/17
課題『雪』
・ドラマとして晴天だけではなく、雪や雨のほうが効果が上がることがある
目標:天気が変わることによって、話をドラマチックにする
(この目標は毎回、書いてますけど、ぼくが個人的に定めた目標です)
人 物
佐藤恭平(32)洋菓子店パティシエ
塩月莉子(21)洋菓子店バイト
山岸俊(11)小学生
山岸さやか(36)俊の母
中年女性
〇繁華街・道(夜)
大勢の通行人が行きかっている。
道の真ん中に電飾でライトアップされた大きなクリスマスツリー。
サンタ姿でチラシ配りをしている人もいる。
〇洋菓子店・外観(夜)
洋風なこぢんまりとしたお店。
〇同・内(夜)
ショーケースに並ぶ色とりどりのケーキ。若い女性や主婦らしき人たちで賑わう店内。
女性客たちは各自、お喋りで盛り上がって、レジに並ぶ気配はない。
佐藤恭平(32)がコック服でレジに立っている。不機嫌そうな顔でため息。
黒いエプロン姿の塩月莉子(21)が店奥からやってきて、
莉子「店長~。そんな辛気くさい顔、クリスマスに似合いませんよう。ほらスマイル、スマイル」
佐藤「(思いつめた表情で)やっぱりこんなセールやるんじゃなかった……」
莉子「なに言ってるんですか。大成功ですよ。このお客さんの数、去年の倍以上いますよ」
佐藤「あのなあ……。どれだけ客がいようとケーキが売れないと意味ねえだろ」
中年女性がレジにやってきて、
女性「あのー……」
莉子「(営業スマイル)いらっしゃいませ。どちらになさいますかあ?」
女性、チラシを1枚だして、
女性「チラシを見てきたんですが、予報では夕方から雪と言っていましたし、今から割引になりませんか? 主人と子供が家で待ってるんです」
チラシには12月24日に限り、雪が降ったら全品半額、と書かれている。
店内の女性客たちのお喋りがピタリとやみ、視線がレジに集まる。
莉子「(苦笑し)て、店長ぉー……」
佐藤「(毅然とした態度で)大変申し訳ありませんが、割引は実際に雪が降ってからでないとできません」
女性「ならいらないわ。他のとこで買うから」
女性、大股で店を出てゆく。
客たちがレジから目をそらし、お喋りが再開される。
佐藤「(イライラして)ったく」
莉子「でも、雪、本当に降りませんねえ。確率90%とかって見ましたけど」
佐藤「降ってほしいのか、雪。お前はうちをつぶす気か? 今日みたいなかきいれ時に ケーキ半額セールなんてやったら、マジでうちの店つぶれるぞ」
莉子「ええーっ。じゃあなんでこんなセールやろうと思ったんですか! いやまあ、提 案したのは私なんですけど……」
佐藤「フラねーからだよ。単なる客寄せのつもりでやった」
莉子「フラねーって……降りますよ! 天気予報みてないんですか?」
佐藤「信じられんだろうが、オレが住んでる場所にはもう20年、クリスマスに雪は降っ てない」
莉子「冗談ですよね?」
佐藤「冗談で店がつぶれるような博打をすると思うか?」
佐藤、真剣な表情で莉子に顔を近づけ、
佐藤「オレが9歳のときのクリスマスの話だ。その日、母親はおれを捨てて家を出ていった。窓の外にしんしんと降る雪を見ながら、オレはサンタさんにお願いしたよ。お母さんを返して、って」
莉子、真剣に聞いている。
佐藤「でも母親は帰らなかった。翌年のクリスマスにも雪が降った。クリスマスに雪を みると、母親を思い出してツラくなった。それでオレは、ならせめて、クリスマスに雪を降らせないでくださいって頼んだ。イヤなこと思い出しちまうからな。それ以来、ずっと晴れ男だ」
莉子「……それ、作り話ですよね?」
佐藤「(自嘲気味に)さあ、どうだろうな?」
莉子「そのお願い、キャンセルしたほうがいいと思います」
佐藤「ハア?」
莉子「今年からは別のプレゼントお願いしましょう。もっと欲しいもの、他にあります よねえ。彼氏が欲しいとか、特別ボーナス欲しいとか」
佐藤「それはおまえが欲しいものだろ」
莉子「小さい頃のネガティブな思いを引きずって、いま欲しいものをお願いしないなん てもったいないです」
佐藤「そもそもいるわけねえだろ、サンタなんて」
莉子「でも、今日雪降らないって信じてるんですよね?」
佐藤「(軽く鼻で笑い)作り話だよ。ウソに決まってんだろ」
莉子「ええーっ! ウソだったんですかあ~」
佐藤「(笑って)ちょっと外でタバコ吸ってくる。後はまかせた」
莉子「ちょっと待ってください。こんなにお客さんいるんですよ」
佐藤「ほとんどが冷やかしだろ。雪でも降らなきゃレジは混まねえよ」
莉子に背中を向けて、ヒラヒラと手を振り、店の奥に消える佐藤。
〇公園(夜)
ベンチでタバコを吸っている佐藤。
星空に向かってフーッと煙を吐く。
佐藤、感傷に浸っているような表情。
サッカーボールが飛んできて、佐藤の頭に激突する。
佐藤、頭を押さえて辺りを見回す。
山岸俊(11)がおそるおそる近づいてくる。
佐藤「あアン!?」
俊、何か言いたげな表情で佐藤の足下のサッカーボールを指さす。
佐藤「ったくよー。まずはゴメンナサイだろ? ボウズ」
俊、抗議したげな目線でサッカーボールを何度も指さす。
佐藤「ちゃんと謝れねえなら、返してやらん」
俊、ムッとしてどこかに走り去る。
佐藤「おいっ。近頃のガキはゴメンナサイも言えねーのかよ」
俊が戻ってくる。
大量の石をTシャツのすそを持ち上げてのせている。
佐藤「おいっ。なんだよ?」
俊、石を佐藤にめがけて投げる。
何度も投げる。
佐藤、サッカーボールで顔をガード。
佐藤「このクソガキ、危ねーだろ! やめろ!」
俊、石を投げるのをやめない。
山岸さやか(36)が小走りで現れて、
さやか「こら! 俊くん、何やってるの!」
俊はさやかの後ろに隠れる。
さやか「スミマセン。大丈夫ですか?」
佐藤「なんとか」
さやか「本当に申し訳ありませんでした。俊君、この人に謝りなさい」
俊「……」
佐藤、俊にボールを差しだし、
佐藤「ほら、ボーズ。これ」
俊、佐藤の手からボールを叩き落とし、落ちたボールをひったくって一目散に逃げてしまう。
佐藤「あのヤロー……」
さやか、何度も頭を下げ、
さやか「スミマセン、スミマセン! 普段は あんなことする子じゃないんですが……。私事で恐縮ですが、主人が急に仕事が入ってしまって、クリスマスを家族で過ごせなくなったんです。それで虫の居所がわるいというか……」
佐藤「……」
さやか「あの、なにかお詫びさせてください」
佐藤「それだったら、そこのケーキ屋で何か 買っていってくれればいいですよ。店の人間なんで」
さやか軽く会釈し、
さやか「俊くーん。ケーキ買って帰ろー?」
俊の声「ヤダー。お父さん帰ってくるって言ってたじゃん。ウソつきー!」
さやか「俊君をだますつもりはなかったの。今夜、雪がふればお父さんの仕事はなくな って、今日帰ってくるハズだったの! 天気予報も雪だって言ってたから……」
佐藤、ハッとしたような表情。
俊の声「じゃあ、雪ふらしてよー! 雪ふるまで帰らないー」
さやか「(ため息)もう。雪をふらせるなんてできるわけないでしょ……」
佐藤「(ツラそうな表情で)お子さん、小さいの頃のぼくに似てますね」
さやか「えっ?」
佐藤「今年はちがうプレゼントお願いしようかな」
さやか、怪訝な表情。
佐藤「新しいお願いはそうだなあ……。店がつぶれませんように、かな」
ベンチを立って立ち去ろうとする佐藤。
佐藤「家族みんなでうちのケーキ食べてください」
キョトンとするさやか。
佐藤「レジが混む前に早くきたほうがいいですよ。半額ですから」
公園を立ち去る佐藤。
首をかしげるさやか。
空からふわりと雪が舞い降りてくる。
空を見上げるさやか。
俊の声「お母さーん。お父さん帰ってくるよ!」
/了
ログライン:
『クリスマスの雪にトラウマを持つパティシエが、店の売り上げを犠牲にして、自分と似た境遇をもつ子供を助けるためにサンタさんにお願いする話』
(今後はここにログラインを掲載しよう、覚えてたら)
アイデアはよかったと思うんだが、
調理に失敗したかな?と感じている作品。
ぼくの感じる失敗点は、
・前半がアクションのない会話劇になってしまっている
という点。
これはドラマの脚本、映像化を前提に書かれたものであり、2人の登場人物が棒立ちで語り合うシーンなんていうのは退屈さここに極まれりという感じ。
本文をみれば分かるが、ト書きがほとんどなく、会話文が続く。
小説かな??
もう1つの致命的な点は、
・主人公が過去話をバイト女にする理由(必然性)がない
という点。
過去話を書きたいのなら、それを言う必然性がある状況設定をつくらなければ、
いきなり自分語りを始める不自然なヤツになってしまう。
しかし、それを回避するアイデアが見つからず、
この部分は妥協して(悪く言えば話の都合上)バイト女に、唐突に身の上話を始めることになってしまった。
・セリフを重視する課題ということで、最後のほうの主人公のセリフは中二病的というかカッコつけすぎたかもしんない。
先生のアイデア:
・主人公と子どもの境遇をダブらせる効果を上げるため、設定を変えてはどうか?
→子供は母親が仕事でいなくて、父親が迎えにくる
→母親に捨てられた主人公と境遇がダブり、そのシーンが前のシーンとよりつながる
・子供の登場するシーンは、母親を呼んで登場してはどうか?
→お母さーん、帰ってきてー とか?
設定が一発で分かり、視聴者が話にノってきやすい
すばらしい変更点だと思います。
その他・感想
・子供がムカつく
→それはムカつくクソガキのほうが、いい話になると思ったからそういうふうに書いた
・あとわすれた
次の課題は雨ですが、どんな話にしようかなー
2016/8/17引導
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