第9話 キマちゃんと左
キマちゃんが自分は特別な存在である。と強く認識した時の話。
キマちゃんはお絵かきが好き。
別にうまくはない。
私はぬりえが好き。
これも別にうまくはない。
でも二人遊びで互いの利害が一致する貴重な瞬間。
遊びはいたってシンプル。
キマちゃんママにお題をもらい、キマちゃんが描く。
できたら私が色を塗る。
完成したら二人の作品を見せに行く。
そして褒めてもらい次のお題を聞く。
それの繰り返し。
平和。
とっても平和。
…まぁもちろん
色鉛筆やクーピー、ペンの種類・色数の多さ自慢を
されることを除けば。。
これを我が家でやったのが問題だった。
その日は珍しくキマちゃんママからのお願いで
キマちゃんをウチでお預かりしていた。
キマちゃん家との大きな違い
それは・・・
ウチはおもちゃが少ない!圧倒的に!
そもそもキマちゃんの家におもちゃがあり過ぎる。
ウチにはなさ過ぎる。
あいにくの雨で外遊びも出来ない。
アニメや映画を見ようにも
どれもキマちゃんの家にあるものばかり。
トランプや親戚からのお下がりのボードゲームなど
ウチにあるおもちゃはバカにして見向きもしない・・・
体を使った遊びや自らおもちゃを作るようなことはせず
「買ってもらったおもちゃ」で遊ぶことに慣れているキマちゃんにとっては
ウチは本当につまらない場所。
おもてなしをする私も困り、お絵かきを提案した。
ノリ気になってくれたキマちゃんを見てほっとしながら
紙と色鉛筆を用意し、台所にいる母へお題をもらいに行く。
いざ描き始めたキマちゃんをみて母が言った。
「へー。キマちゃんは左利きなんやね。
左利きのAB型って…天才タイプやん!」
あくまで母談。諸説ありですよ。もちろん。
が!!
この発言こそがことの発端。
それまで意識したことはなかったが確かにキマちゃんは左利き。
マンションで仲良くしている
同年代の子供たちの中でもみても唯一の左利き。
キマちゃんも特に意識したことのなかった部分だったんだろう。
顔がみるみるうちに得意げな顔になり
「そ、そうやねん!キマちゃんひだりききやねん!
キマちゃんだけやねん!みおちゃん違うやろ?
キマちゃんちゃうねん!みんなとは!」
まるで自分は選ばれた特別な人間であるかのような言い方。
普段自ら自慢できる部分をせっせと探しているキマちゃんにとって
他人から思いがけない部分を褒められるということは
計り知れない優越感があったんだろう。
この日以来、事あるごとに
「キマちゃんひだりききやから~」
と付けるようになったキマちゃん。
私は子供のころ矯正して鉛筆とお箸だけ右利きになった
なんちゃって右利きの母をちょっとだけ恨んだ。
あのときそこまで話してくれていたら。。
キマちゃんの左利き自慢はこれからも続く。。
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